週刊ベースボールONLINE

新シーズンにかける

巨人・大田泰示を変えた「心構え」とは

 


背水の覚悟で臨む7年目であることに違いはない。ただし、背番号55から44へと変更せざるを得なかった1年前とは、周囲の目も、自らに懸ける期待も、ポジティブなものへと変化しているのではないか。大田泰示、新たな一歩を踏み出す、チャレンジの1年である。
文=三浦 正(スポーツライター) 写真=BBM

メジャーの選手も実践、大田を変えた心構え


 確かな足跡を残した。2014年シーズンの終盤、大田泰示は大きく印象に残る活躍を見せ、首脳陣、チームメート、そして、ファンに成長した姿を披露した。

「こうやっていけば一軍でそれなりに結果が出る、というものが、自分の中で少しつかめた部分がありました。自分の考えていることが、少しずつ現れた年だったなと思います」

 手応えはつかんだが、慢心はもちろんない。自らの力を過信せず淡々とした口調に、新シーズンへの意気込みが感じられる。

 昨年の春季キャンプでは、球団OBの松井秀喜氏からも直接指導を受けるなど、これまで以上に濃密な時間を送った。ただ、なかなか結果には結び付かない。5月9日にこの年、初めて一軍に昇格したが、同17日に二軍へ逆戻り。直後は大不振に陥り、これまで結果を残し続けてきた二軍でも納得のいく打撃ができなくなってしまった。

14年の宮崎春季キャンプでは、臨時コーチに就任した松井秀喜氏から複数回にわたって直接指導を受ける。内容こそ「2人の秘密」(松井氏)だが、大田は大きな刺激を受けた


 6月のある日。もがき、苦しむ中、ヤンキースへのコーチ留学、特別コーチ経験もある後藤孝志育成コーチ(当時。現二軍内野守備走塁コーチ)の何げない言葉が復調へのヒントとなった。打席では「シンプルに考える」「欲を殺す」「センター返しを心掛ける」。基本とも言えることだが、最も大切な部分でもある。「メジャーの選手も実践していると聞きました。そこ(無心でいく)が一番大事なところだと思うので。自分の中では、一番心に響きました」と大きな転機となった。

 一軍で結果を残すためには、もちろん技術も欠かせないが、精神面も重要である。力めば、フォームは崩れることが多い。気持ちに波を作ってしまえば、安定した打撃はできない。「変な欲を出したり、結果を求めなきゃいけない、といったところで、自分を苦しめて野球をやっていた。悪循環になっていた」と大田は分析する。

かけがえのない経験。大田を変えた2014


“平たんな気持ち”で試合に入っていけるようになると、徐々に結果がともなってくる。一軍に再度、呼ばれたのは、優勝争いが本格化してきた8月上旬のことだった。代走や守備固めでチームに求められる役割に徹しながら、打っても巡ってきたチャンスをものにする。

 9月17日の広島戦(マツダ広島)。6対7の8回無死一塁で、代打で登場。送りバントが濃厚なケースだったが、サインはなく、原辰徳監督からは「思うように打て」と直接言葉を掛けられた・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

Go for2014!〜新シーズンにかける男たち〜

Go for2014!〜新シーズンにかける男たち〜

新たなシーズンに巻き返しや飛躍を誓う選手に迫ったインタビュー企画。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング