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鳴り物入りで入団した怪物左腕も、覚醒し切れないまま3年間が過ぎた。しかし今季は事情が違う。エースサウスポーがチームを去り、絶対にやらなければいけないシーズンが待ち受けている。真の姿を見せるべく、胸に秘めた思いは強い。
文=石川悟(時事通信社)写真=高塩隆

チームの中心選手へ


 本人が望む、望まないに関わらず周囲の期待は大きい。フリーエージェントでヤクルトへ移籍した成瀬善久の抜けたエースの穴。プロ4年目を迎えたロッテ藤岡貴裕は、同じ左腕の穴を埋めるべく、石垣キャンプに臨んでいる。

 藤岡にとって、超えなければいけないカベがある。東洋大からドラフト1位で入団したルーキー・イヤーの2012年から昨年までの3年間すべて年間6勝止まり。

「何とも言いようがない数字。本当はもっと勝っていなければいけないんですけど」と悔しさを見せたが、すぐに「いいときと悪いときの波を少なくすれば、もっと勝てる。今年は先発として1年間投げて、最低でも去年の倍は勝つつもりで臨みます」と決意を明かした。語る口調は静かながら、その目は鋭く、強い決意をにじませた。

 12年4月1日。藤岡は敵地のKスタ宮城(現コボスタ宮城)で楽天との開幕カード3戦目を任された。最速150キロ。8回途中まで2失点の好投を演じ、「プロになった実感がする」。プロ初登板で白星を手にし、幸先よいスタートを切ったはずだった。

 だが、その後は思うように勝ち星を伸ばせなかった。伊東勤新監督の下で迎えた2年目は先発での起用になかなか応えられず、中継ぎへ回ることも。その中継ぎでは、まずまずの成績を挙げるものの、先発に戻ると結果が残せない日々が続いた。

 精神面の弱さを指摘する周囲の声が本人の耳に届くこともあった。

「先発のときはいろいろ考えてしまっていた。でも、中継ぎでの登板は、言ってみれば先発の人の試合という感覚がある。その投手の試合を壊さないことだけを考えて、(与えられた)イニングを抑えれば良かった。本当は先発も救援も同じ気持ちで投げられれば一番いいのですが……」

 東洋大時代に東都大学リーグで27勝(9敗)を挙げた藤岡でも、高いレベルのプロでは先発で試合をつくる難しさを痛感した。

 オフは肉体改造にも取り組んだ。体重を落として体のキレを良くしようと、この冬は積極的にジムに通ってウエート・トレーニングに時間を割いた。大学ではチームの方針で筋トレを行っていなかったため、本格的に機械を使用したトレーニングはほぼ初めてのことだ。

「これまで3年間やってきて、何か変えないといけないと思った。ウエート・トレをやって、プラスになることはあっても、マイナスになることはないと思う」

オフにはトレーニングの見直しを行い、より強い体を手に入れた



 年明けからは本拠地のQVCマリンで唐川侑己益田直也両投手と自主トレを開始。89年生まれの同世代トリオ。「右の先発の唐川、左の僕。そして救援の益田と、それぞれタイプが違って、いい意味でお互いが刺激し合っています。投手は僕らが引っ張り、野手は同い年でキャプテンの(鈴木)大地が引っ張っていければ、活気のあるいいチームになる」と自覚も芽生えてきた。

 練習中に着ていたのは、藤岡の前の背番号18、清水直行氏(現ニュージーランド野球連盟ゼネラルマネジャー)の口癖だった「やるしかないねん」の文字が書かれたTシャツ。まさに藤岡の今の心情を現しているようだった。

エース襲名への意気込み


 昨年のキャンプ、オープン戦はエース成瀬や西武からFAで加入した涌井秀章、新人だった石川歩らの実戦登板が優先された。そのため、雨天中止になると、そのしわ寄せで藤岡の予定回数が減ったり、登板そのものが飛ばされたりした。そこで今キャンプでは早めに肩をつくり、球数を投げることをテーマの一つに掲げる・・・

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