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第32回 松岡弘「昔は楽しい勝負がいっぱいありました」

 

プロ野球の歴史を彩り、その主役ともなった名選手の連続インタビュー。第32回はヤクルトひと筋で投げ続けた松岡弘氏の登場だ。速球派右腕はONに真っ向勝負を挑み、さらに他球団のエースとも渡り合った。惜しくも200勝に届かなかったが、マウンドでの存在感は抜群。ヤクルト初優勝時のエースが自らの野球人生を語る。
取材・構成=大内隆雄、写真=BBM



長嶋、柴田が口をそろえて「松岡が一番速かった」。それでも本人は「江夏、江川がすごい」


先週号では、小山正明氏の150キロ超のスピードボールについてご本人の証言を得たが、取材・構成者は、東京(ロッテ)に移ってからの小山氏の投球しか知らないから、最盛期の超スピードボールは見ていない。しかし、今週登場の松岡弘氏の場合は、その最盛期から引退までしっかりとこの目におさめているから、かなりの自信を持って松岡氏のボールについて語ることができる。

で、取材・構成者は、松岡投手が最も速い球を投げた男だと断言したいのだ。江夏豊(阪神ほか)でも平松政次(大洋)でも村田兆治(ロッテ)でも江川卓(巨人)でもない。それは松岡氏だった。ただ、山口高志(阪急)のいいときは、松岡氏と好勝負だったと思う。しかし、勝ち星が191勝の投手と50勝の投手を比較するのは失礼に当たるだろう。取材・構成者が意を強くするのは、あのミスター、巨人・長嶋茂雄三塁手が「松岡が一番速かったねえ」と語っていることだ。松岡さん、どうでしょうか?


 速いということに関しては、巨人の柴田さん(勲外野手)も「マツ、お前が一番速かった」と言ってくれるんですよ。でも、私は、そんな速い球を投げたとは全然思っていないんですよ。私は江夏のボールを見たとき、ぶったまげましたよ。今風の表現をすれば、こいつ、初速より終速の方が速いんじゃないかと(笑)。あなた、お笑いになりますけどね、ホントにそんな感じなんです。あのフォームのせいでしょうか、投げた瞬間はそう速そうには見えないんですが、打者に近づくと突然速くなる、そんな感じのボールでした。そりゃ打てませんよ。しかも、あのコントロール。私は、あのオールスターの9連続奪三振もベンチで見ていましたが(71年第1戦、西宮)、いや、ものすごいボールでしたよ。

 それと、江川も速かったですね。やはり、怪物と言われるだけのことはありました。「江」のつく名前の投手は、剛速球投手ですね。とても偶然とは思えない(笑)。江川と言えば、あの私のホームランだけで完封した試合ですか?(江川が新人の79年9月2日の神宮でのヤクルト-巨人戦で松岡氏は江川と投げ合い、1対0の完封勝利。ヤクルトの1点は3回に松岡氏が放ったソロホーマーの1点。先発投手がホームランして1対0で完封した試合は、プロ野球史上7人目の快挙。ある面、完全試合よりも達成の難しい記録だ。しかも毎回奪三振だったのだから、空前絶後と言ってもよかった)アレはね、江川もたしか2安打の完投です。内容はむしろ私より良かったのです。よほど悔しかったのでしょう。以後、私の打席は・・・

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プロ野球80年の歴史を彩り、その主役ともなった名選手たちの連続インタビュー。

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