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わが思い出のゲーム

西本聖が語る1987年開幕戦、中日・落合博満との真剣勝負

 

巨人時代、江川卓と激しくエースの座を争っていた西本聖氏。思い出の試合として挙げたのは1987年4月10日、後楽園球場で行われた中日との開幕戦だった。落合博満との4打席にわたる戦いは、自身にとってもチームにとっても大きな意味を持つものとなった。
取材・構成=富田庸


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この年の巨人の開幕投手は誰が務めるのか。開幕前、それが大きな関心事となっていた。王政権では3年連続でリーグ優勝を逃しており、“逆襲”が至上命題となっていた。前年16勝の江川卓が有力視される中、マウンドに上がったのは西本氏。そして、トレードでロッテから中日にやってきたばかりの落合博満と、4打席にわたる真剣勝負を演じる。

 開幕直前に巨人のコーチ、バッテリーで、落合さんに対してどう攻めていくかというミーティングを開いたんです。前年までのパ・リーグの成績、そしてスコアラーが集めたオープン戦でのデータ。今ほど膨大な量ではないですが、その数字を基に、映像を見ながら話し合いました。ただ、映像を見ると打っているものばかり。内角も打つ、外角も打つ、変化球も打つ……さすが三冠王を2回取るほどのすごいバッターだな、と。

 結局、欠点は見つかりませんでした(苦笑)。だから僕の結論は、「自分が一番自信のあるボールをしっかり投げ切ろう」でした。仮に打てなかったときの映像を見ていたら、「ここに投げればいいんだ」と勝手に解釈していた可能性もある。見なくて正解だったかもしれません。

 第1打席に向かう落合さんの姿には、「パ・リーグ三冠王」のオーラがありました。だから、1球目から勝負にいったんです。様子を見るつもりもなかった。一塁に走者を背負った場面でしたけれど、内角低めのシュートで詰まらせ、三塁ゴロに打ち取ることができました。四番とエース級のピッチャーの対決というのは、その配球が伏線として次の打席以降につながっていくもの。詰まらせて、タイミングも外せた。いい滑り出しでしたね。

 2回目の対決は4回表一死走者なしの場面でした・・・

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