2016年まで67回の日本シリーズが開催されている。しかし、その中で3連敗後の4連勝、逆転日本一は過去3度しかない。そのうちの一つが89年の巨人対近鉄だ。巨人の3連敗から4連勝の足掛かりとなった第4戦に先発完封した香田勲男。球史に残るこの先発マウンドが今でも忘れられない試合となっている。 取材・構成=椎屋博幸 負けてもオレのせいじゃない
1989年の巨人は投打にバランスが取れていた。先発では斎藤雅樹20勝7敗、桑田真澄17勝9敗、槙原寛己が12勝4敗と3本柱を形成し、打撃ではクロマティが首位打者に輝くなど圧倒的な強さでセ・リーグ優勝。勢いに乗るパの覇者・近鉄よりも優位だと思われていた。しかし、シリーズが始まるとまさかの3連敗を喫し、後がなくなった。 第3戦に負けたとき私は、球場ではなく、翌日の試合に向けホテルで試合を見ていました。第1戦で斎藤さん、第2戦で桑田、さらに第3戦では宮本(
宮本和知)さん、とまさか3連敗するとは思ってもみませんでした。全員が私よりはるかに素晴らしい投手ばかり。これで明日負けても、誰も私を責めないだろうな、と思いましたね。大事な試合で“先発に指名した人が悪い”といい意味で開き直っていました。
この試合(0対3)の夜、ホテルでミーティングがあったのですが、そのときに藤田(
藤田元司)監督が「みんなここまできたら開き直ってやろう。ここからはトーナメントと同じだ。みんな高校野球でそういうことは経験しているはず。そのときの思いで戦おう」と言われました。
第3戦後の近鉄先発の加藤哲さんのヒーローインタビューは、実際に「
ロッテより弱い」とは言っていないんですが、シーズンのほうがきつかった的な発言をされました。私は試合をテレビで見てはいましたが、試合が終わった直後にテレビを消しましたので、ライブでは聞いていないんです。でもこの夜のミーティングのときに野手の方々の雰囲気がすごかったのは覚えていますね。
私自身は、第4戦先発を日本シリーズ前に言い渡されていたので、そこに合わせて調整をしてきた。しかし第1戦目に負け、第2戦目も負けとなったときに「オレが先発してよいのかなあ」と思うようになってきたのも事実です。3戦目が終了後の夜のスポーツニュースで、解説者の方々が・・・
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