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野球浪漫2014

坂口智隆[オリックス・外野手]

 

 オリックスが、ソフトバンクとの激烈な優勝争いを展開していた2014年9月20日、QVCマリンでのロッテ戦でのことだった。3対2とオリックスが1点をリードし、逃げ切りを図った9回裏の守備。守護神・平野佳寿が登板するも同点に追いつかれ、さらに一死一、二塁。ロッテ・岡田幸文のライナー性の打球が、左翼線付近に落ちようとしていた。レフトの坂口智隆はそのとき、打球へ向かって飛び込んだ。打球は捕れず、無念の逆転サヨナラ負けだったが、坂口にとっては大きな意味を持つダイブだった。

2年前の『あのとき』のように、頭から突っ込んだ――。かつて4年連続ゴールデングラブ賞を獲得した名外野手が、抱え込んだ『違和感』を今、必死に乗り越えようとしているのだ。

文=喜瀬雅則(産経新聞) 写真=佐藤真一、BBM



 記憶の中の映像と目の前で躍動している坂口が、どうしても重ならなかった。何かが違うのだ。どこか、しっくりこない。他社の番記者たちにも尋ねてみたのだが「そうですか?」。そこで、動画サイト上で、プレーの映像を、何本か検証してみた。

 ライトスタンドで、赤地に白抜きの『9』の応援旗が振られる。坂口が打席へ向かう。赤の手袋、赤のリストバンド。そう、坂口のイメージカラーは『赤』なのだ。そんなとき「2014年9月7日 坂口5打点」の表題がついた動画に、ふと目が留まった。京セラドーム大阪での日本ハム戦。3回、上沢直之からレフト前へ2点適時打を放ったシーンだ。打席に立つ坂口の手元は『青』――。これこそ、私の感じた“違和感”だった。

「赤、浸透しているじゃないですか?気づきました? ほかの選手も分かったみたいです。みんなにそう言われて、良かった〜」

 いたずらっ子が、ちょっとした仕掛けがバレたかのように、にこやかな表情で、坂口がその秘密を明かしてくれた。オシャレに敏感な30歳は、チーム内でも一、二を争うファッションリーダー。その男が、自らのイメージカラーを、プロ12年目の今になって、なぜ変えようとしているのだろうか。

「何か『違和感』が欲しかったんです。自分の中で・・・

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苦悩しながらもプロ野球選手としてファンの期待に応え、ひたむきにプレーする選手に焦点を当てた読み物。

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