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野球浪漫2015

広島・安部友裕「“楽しく”でなく“ギラギラ”と」

 


2008年入団のドラ1。その才能が花開くのには時間を要している。ただ、今季の広島は三塁のポジションを固め切れていない。そここそが安部友裕のターゲットだ。積極果敢なプレーを武器に、辛酸を舐めた過去の経験を糧に、背番号60の存在価値を高める決意だ。と
文=菊池仁志、写真=前島進、毛受亮介

606日ぶりのスタメン


『一番・サード・安部友裕』

 4月9日の巨人戦(マツダ広島)、本拠地に響くスタメンを告げるアナウンスに身が震えた。2013年8月11日以来、606日ぶりの先発出場。4月7日に今年初めて一軍登録されてから「(先発は)あるだろうと心の準備はしていました」と言うが、それは「一番」、打順の話だ。

「何が緊張したかって、サードってことです。ずっと緊張していました。サードは全然、景色が違うので」

 今年2月、宮崎・日南、沖縄と続いたキャンプを一軍で過ごした安部だが、実戦形式の守備で三塁の位置には就いていなかった。オープン戦の5試合も、開幕一軍がならず出場した二軍での試合も、守ったのは「本職」という遊撃か二塁だった。しかし、一軍を見ると遊撃は田中広輔、二塁は菊池涼介がレギュラーとして定着している現状がある。「出るなら三塁しかないですからね。今はそこを獲ってやるっていう気持ちです」。腹は決まった。

 初回、二番・片岡治大の三ゴロを処理して向かった15年シーズン最初のアットバット。「久しぶりの一軍でのスタメンですし、いろいろな思いがありました。僕らしさを出すつもりでした」。カウント2ボールからの3球目、巨人・菅野智之のスライダーを一閃した。「積極的に、とにかく好球必打です」。右前打で出塁すると、それまで菅野に対して13打数6安打の相性の良さを買って起用した緒方孝市監督のタクトもさらに冴えを見せる。二番・菊池の初球、バスターエンドランを敢行。無死一、三塁となり、三番・丸佳浩の二ゴロの間に安部が先制のホームを踏んだ。

 この試合はエース・前田健太が7回を投げ、中崎翔太、ヒースとつないだ完封リレーでスミ1での勝利。「開幕前、最後に(二軍に)落とした選手だけど、ファームでしっかり結果を出して、一番に推薦があった」。相手エースからの猛打賞で指揮官の期待に応えた。試合開始からわずか5球、同級生トリオで奪った1点がスコアボードの隅で光り輝いていた。

 13年4月17日のDeNA戦(マツダ広島)がそうだった。一番・遊撃でスタメン出場。初回に遊撃内野安打で出塁すると二番・菊池の犠打、三番・丸の四球に相手のミスも重なり一死一、三塁。エルドレッドの犠飛で生還し、1対0で勝利した。この年は初の開幕一軍入り。一軍定着、レギュラー奪取のシーズンとするはずだった。

「チーム内では同級生の存在が刺激になります。丸、菊池、(野村)祐輔……。二遊間を菊池と組んで、センターが丸、センターラインが僕らの世代。打順も僕が一番、二番が菊池、三番が丸だったら最高です」

 かつて口にしていた理想から、いつしか遠い場所に追いやられていた。しかし・・・

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