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主将としてチームをけん引してきた栗山巧。今季は開幕から二番に座っているが、開幕から1カ月以上、打率1割台と結果が出なかった。しかし、本人の表情は明るい。今年で32歳となるが、まだ進化の過程。チームを優勝に導き、打撃道を極めるために背番号1は歩みを止めない。
文=中島大輔(スポーツライター)、写真=小山真司

アップデートを試みる打撃スタイル


 開幕から二番で起用されてきたが、5月4日のオリックス戦(西武プリンス)を終えた時点で打率.188――。

 高卒14年目の今季、栗山巧は1カ月以上も低空飛行を続けてきた。4月22日に行われた日本ハム戦(西武プリンス)後、二軍時代から指導している田邊徳雄監督が心配の声を上げたほどだ。

「ちょっと強引に行き過ぎているね。彼本来のミート中心から離れていて、強引に振っているところがある。責任感が非常に強い男なので気持ちは分かるんだけど、もっと気楽に打席に立ってほしい」

 だが、思うようにヒットの出ない栗山に、悲壮感は漂っていない。冒頭のオリックス戦の前、自身の状態をこう分析している。

「完全なる個人的な話でいくと、そこまで不振とかではないです。数字だけを見たら不振なんですけど、そこまでどうにもならんなあという感じではないかな。開幕してから1カ月、何が良くて、悪かったのかなと考えているところです」

 32歳を迎える今季、栗山は自身の打撃スタイルを変化させようとしている。より正確な表現をすると、スマホのアプリのようにアップデートを行っている。

 逆説的な表現でその決意表明をしたのが、昨年末に契約更改を終えた直後の会見だった。

「何回か『タイトルを取りたい』と言ったことがあるんですけど、無理だということが分かったので。そろそろそういう目標をあきらめて、1年間試合に出て、とにかく優勝を目指すというところに本気で照準を合わせていきたい」

 チームが日本一に輝いた08年、栗山は最多安打を獲得している。確かに12年から3年連続で打率3割に届いていないものの、選球眼と逆方向への打撃は球界トップレベルだ。それだけに「タイトルはあきらめる」という発言は、衝撃的だった。「優勝に照準を合わす」というのは本音だろうが、発言の真意はどこにあるのか。

「単純に力が及ばへん、と。無理と(苦笑)。そんなことを考えているなら、キャプテンとしてもっと違うことをやれたほうがいい。でも、取れるときが来たら取れると思うし。いつかは取りたいと思っているし。タイトルを野球人生の中ですべてあきらめたわけじゃなくてね。まだ僕の番じゃないな、と。自分の中ですべてのものがそろっていないなと感じたので。去年1年間、自分の気持ちと技術が、まだまだコントロールし切らんというのがあるので」

さらなる高みを目指して、打撃で試行錯誤を重ねる。理想とする打撃が完成したときが楽しみだ



シンプルに、原点に立ち返る


 14年を振り返り、栗山は「試練の1年」と表現している。チームは開幕から低迷し、5位でフィニッシュ。自らはリーグ11位の打率.288に終わった。

 何かを変えないと、自分は過去3年間の停滞から脱出できない――。

 まずは力不足を自覚し、未熟な自分を受け止めた。

「単純に言ったら、もっと自分の思ったところでタイミングをとれて、バットを出せて。そこまでできたら・・・

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