輝きを放った18歳のルーキーイヤーから4 年。22歳の青年は、壮絶な野球人生を辿っている。2 度にわたる右ヒジの手術、そして過酷なリハビリ。それでも強靭な精神力と地道な努力で、苦難からはい上がってきた。野球ができる幸せを感じながら試行錯誤を重ねる日々。復帰を果たした男は今、完全復活の途上にいる。 文=田辺泰樹[楽天イーグルス広報]、写真=井田新輔、BBM 天国と地獄を見た紆余曲折の4年間
球場内に両チームのスタメン発表のアナウンスが流れ、緊迫感が漂い始める試合開始前。
釜田佳直には、グラウンドへ向かう前に必ず行うことがある。ユニフォームに着替え呼吸を整えると、そっと清めの塩を取り出す。その塩を掌に乗せ、体に撒き、試合に臨む。今年から始めた先発登板日の儀式。「ケガがないように」と、願いを込めて──。
「相手は大谷君。勝つなら1対0しかないと思いました」 今季の初勝利は、開幕から3度目の先発となった4月10日の
日本ハム戦[koboスタ宮城]だった。「いろいろな球種を投げて、何を投げているか分からなくさせたことが良かったです」と振り返ったとおり、ツーシーム、カットボール、スライダー、
シュート、カーブ、フォーク、チェンジアップと、直球を軸に多彩な変化球を駆使して、打者を翻ろうした。
7回表無死一、二塁。
「リハビリの期間の頑張りが、ふとよみがえってきた」 ピンチの場面も無失点で切り抜け、右手を小さく握り締め叫んだ。
大谷翔平との投げ合いを制して、イメージどおりに1対0の勝利。
梨田昌孝監督は、「大谷を相手によく1点で勝てた。則本(昂大)に次ぐ先発の柱ができた」と、7回4安打無失点のピッチングを称賛した。
「僕とエイゴローは同級生なので、2人で何回もここへ立ちたいです!」 この日、ヒーローインタビューのお立ち台へ一緒に上がったのは、釜田と同じ22歳のルーキー・
茂木栄五郎。大卒1年目と高卒5年目、同じ歳でもプロでの経験は4年違う。
「故障前は、がむしゃらに投げていました。プロでやって来て、抑えるために何をするべきか考えて、それを実行できるようになってきたと思います」 昨年までの4年間、それは釜田にとって、天国から地獄に突き落とされ、そこからはい上がってきた紆余曲折の期間だった。若くして壮絶な野球人生。同世代の誰よりも野球と真摯に向き合い、今この場所に帰ってきた。
鮮烈なデビューも狂い出した歯車
「プロになることが目標ではなく、プロで活躍することが目標です」 高い意識と向上心は、高校時代からすでに芽生えていた・・・
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