どこのポジション、どの打順を任されようが、淡々と自らの役割を果たす。その姿はまさに平成に生まれし「侍」──。天性の打撃センスとプロの世界で長生きするために確立した打撃スタイルで、今やチームになくてはならない存在となっている。今季、工藤公康監督からの言葉に自分の居場所を確信した。寡黙な男が、チームのため、大きな目標のため、今日もいつもと変わらぬリズムで試合に入っていく。 文=田尻耕太郎(スポーツライター)、写真=湯浅芳昭、桜井ひとし、毛受亮介 大先輩が見せた揺るがない姿
午前11時。いつも決まった時間に、ヤフオクドームの駐車場に
中村晃の愛車が滑り込む。
それは本拠地ナイターの日。プレーボールまであと7時間もある。試合前の全体練習が始まるのも午後2時過ぎだ。時間がたっぷり有り余るのではなかろうか。
「まずメシを食って、トレーナーにマッサージをしてもらって、その後は練習です。グラウンドでのアーリーワークに出たり、ロッカールーム奥の打撃練習場でティーをしたり。それからストレッチ。そんなことをしているうちにもう午後2時ころになります。3時間なんてあっという間です」 また、試合のない月曜日は、原則的にチームは休日となっているが、それでも中村晃はヤフオクドームに姿を現す。いわゆるオフ返上だ。
「完全に休んでしまうと、翌日に体が動かなくなるタイプなんです。ちょっとでも汗をかいておくといい。13年、一軍に定着したシーズンの途中に自分で感じてからやり始めたことです」 しっかりとしたルーティンを作る。一流選手にはよく見られる姿だし、打撃職人と評される男らしい一面でもある。
かつての、中村晃の言葉を思い出す。初めて一軍に上がったとき、用意されたロッカーはなんと当時キャプテンの
小久保裕紀の隣だった。中村晃は小久保のアリゾナ自主トレに帯同させてもらった縁こそあったが、尊敬する大先輩の横でいつも緊張していた。そんな毎日の中で、気づいたことがあった・・・
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