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野球浪漫2016
ロッテ・清田育宏 「大吉」だったと思える日まで――。

 

昨季、大ブレークを果たし、一躍、“千葉のスター”となった。しかし、2016年シーズンは苦しみ、悩み、そして不運も重なった。一向に数字が上がらず、二軍落ちの屈辱を味わいながら、それでも笑顔を絶やさず、誰よりも声を張り上げ、一心にバットを振り続けた。この苦しい1年があったから──。そう思える日が、必ず訪れるはずだ。
文=渡辺剛太、写真=湯浅芳昭、大泉謙也

「1」&大吉から始まった2016年シーズン


 今年1月2日、清田育宏は浅草寺でおみくじを引いた。結果は2年連続の「大吉」。しかも、1番から100番の中で背番号と同じ「1」を引き当てた。

「大吉で1番。全部いいことしか書いてなかった。去年、浅草寺で大吉だったので、同じ場所で引いたらまた大吉だった。いいことありそう。おみくじは大切に保管してある。1から100までの数字で1番だから、めっちゃうれしい。背番号も1だから、自分にとっては特別な数字。チームでも1番打点を挙げたい」

 声が弾んだ。個人でもチームでも「1番」になるためのシーズンは、幸先よくスタートした。


 市柏高では投手。3年夏は準決勝で木更津総合高に敗れて涙をのんだ。失策がらみで失点して甲子園の夢は断たれたが、投手としての実力には絶対の自信を持って東洋大に進む。

 しかし、東洋大では挫折が待っていた。

「いい投手がいっぱいいた。プロに入った投手も多いし。逆にそれが良かったと思う。投手では出られないのが分かった」

 同学年にはソフトバンクにドラフト1位指名された大場翔太がいた。在学中は巨人乾真大、元ロッテ上野大樹らともチームメートで、投手の層は厚かった。しかも清田は「イップス」になったという。大学4年は打者で勝負した。

「投手に比べたら打者はいいよ、だってイップスがないんだから。投手のときは素振りもしていなかった」

 全体練習が終わっても居残りでバットを振り続け、レギュラーをつかむ。とにかく振り込む姿勢は、このとき身についた。イップスに悩んだ投球から解放され、打撃の楽しさに浸っていた・・・

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