果敢に次の塁を狙う。そこに迷いは1ミリもない。プロに入ってから足が自分の武器だと気付いた異色のスピードスター・福田秀平は、度重なる故障に苦しめられながらも32回連続盗塁の日本記録を達成した。参考記録ではあるが、偉大な記録。恩人の言葉が折れそうになった心を支えてくれた。周りへの感謝を胸にこれからも走り続ける。 文=田尻耕太郎(スポーツライター)写真=湯浅芳昭、中島奈津子、高原由佳、上野弘明 公式記録にならずも自信になった連続盗塁
福田秀平の無念。それは自身の記録が、正式な“日本レコード”として球史に残されていないことだ。
2015年5月9日。ヤフオクドームでの
楽天戦、10回に代走で出場すると、打者・
柳田悠岐の3球目に二盗を決めた。11年から5シーズンにまたがって32回連続で成功させた盗塁だった。つまり、それはかつて「プロ野球のスピード感を変えた男」と称された
広瀬叔功氏(南海)が1964年の1シーズンで達成した「31」を塗り替えるものだったのだが、NPBの規定では、盗塁では複数シーズンで作られた記録は公式には認められないというのだ。
「調べたんですけど、メジャーはシーズンをまたいでもOKらしいんです」 確かにそうだ。メジャー記録として公認されているのは、1988年〜89年にかけて50回連続盗塁を決めたビンス・
コールマン(カージナルス)だ。そしてア・リーグに目を向けるとリーグ記録保持者は
イチローなのだ。その45回連続盗塁もまた2006年から2シーズンにわたって記録されたものだった。
「制度なので仕方ない部分もあります。だけど、イチローさんが以前インタビューの中で、自分の誇れるものとしてこの連続盗塁記録を挙げられていた。その言葉ですごく自信になったし、自分の中でより大切なものになりました」 盗塁という作戦はギャンブルだ。そのように表現をする人もいる。野球においては本来、投手がクイックモーションで投げ、捕手がミスなく送球できれば、走者は必ずアウトになるように出来上がっているからだ。
走者はそれを覆がえそうとする。
果たして盗塁の極意とは何か。福田に答えを求めてみた・・・
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