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野球浪漫 進むべき道を切り開け〜勇往邁進〜
楽天・福山博之 脇役の誇り 「とにかくピッチャーを続けたい。その思いが野球人生をつなげた」
楽天・福山博之 脇役の誇り 「とにかくピッチャーを続けたい。その思いが野球人生をつなげた」

 

プロ2年目のオフに戦力外通告を受けた男が、今では首位を走るチームの勝利の方程式の一角を担っている。野球人生の中でいくつもあったターニングポイント。そこでは必ず、自身の意志を貫いてきた。その先にあったのは、充実した日々である。
文=富田庸、写真=BBM

歓喜の初勝利から頼れる存在に


 プロ初勝利は2014年4月6日のソフトバンク戦[コボスタ宮城]。2対2の同点で迎えた8回無死一塁の場面でマウンドに上がると、打者3人をピシャリと抑えた。その裏、味方が勝ち越したことで白星が転がり込んできた。

 試合後、勝ち越し打を放った銀次とともにお立ち台に上がった福山博之「ここに立つことに慣れていないので緊張していますが、チームが勝ったことが良かったです」と笑顔で振り返った。これをベンチ裏で聞いていたのは星野仙一監督(当時)。囲み会見では「いい投球。今日ぐらいは勝たせてやらなアカン」とそっけなかったが、それには理由があったのだ。後日、笑顔でこう明かした。

「あのときはヤバかった。ちょっと話したら、こみ上げてきちゃって。アイツの勝てなかった4年間とかを思い出したらヤバくなって、すぐに会見を終わらせたんだよ」

 これが実質的なスタートとなった。そして迎えた2017年、プロ入り7年目の中継ぎ右腕は、確かな信頼を受けている。現在は7回・森原康平、8回・ハーマン、9回・松井裕樹という必勝パターンが定着しているが、「福山は経験があるから、走者がいる場面でも投げさせられる」。梨田昌孝監督の福山への信頼は絶大だ。

 現在は主に先発投手からバトンを受ける6回を任されているが、起用法はそれだけにとどまらない。4月2日のオリックス戦[京セラドーム]では3対4と1点差に追い上げた直後の8回裏に登場。一死から安打を許すも、後続をダブルプレーで抑えた。そして9回表にペゲーロの逆転2ランが飛び出し、早くも今季初勝利を手にしている。

「去年のこの時期は結構打たれたりしていたんですけど。今年は調子いいというより、それなりに練習をしてきた成果だと思います。去年と比較することはないですけどね」

 5月10日現在、13試合に登板して防御率0.00。ただし本人はその数字に興味を示すことはなかった。

投手になるために賭けに出て


 人口4万人弱の島根県雲南市で生まれ育った。出雲国の南部に位置しているのが由来だという。本人いわく、「何もないですけど、自然の豊かなのどかなところですね」。小学2年時に大東西スポーツ少年団で野球を始めた。その理由はこうだ。

「野球のチームしかなかったから。サッカー、バスケのチームがあるとは聞いたことがないですから。野球が盛んな地域だったと思います。メンバー数はそれほど多いわけじゃないですけど、ボールを使える競技は野球くらいでしたから、みんなやっていました。当初のポジションは内野手、そして投手です」

 小学6年時に全国大会に出場。当時はピッチャーを務めていた。成績は「1回戦で勝ったくらい」と振り返るが、これが自身初の全国舞台となった。ちなみに今季、開星高、明大を経て阪神入りしたドラフト5位ルーキー・糸原健斗も同チーム出身者で、大東町出身のプロ野球選手は2人目となる。

「中学、高校では主に二塁手。ピッチャーはほとんどやりませんでした。体もちっちゃかったので、特に目立つわけでもなく、ごく普通の選手で。特にバッティングがいいわけでもなく、足が特別に速いわけでもなく、守備がうまいわけでもなく……」

 高校2年秋に県3位で中国大会に出場したものの、上位進出はならなかった。結局、小柄な二塁手は一度もスポットライトを浴びることなく、高校野球を終えた。

 野球人生における最初のターニングポイントを挙げるとすれば、それは大商大入学直後のこと。受験時に「都会に出てみたい」と大阪行きを決断したが、第一志望の大学への受験に失敗。

「それでもどうしても大学で野球がやりたかった。大商大の過去問に取り組んで、一般入試で合格することができました。実際、大学の野球部から声がかかるレベルでもなかったので」

 進学後、すぐに野球部に入ったわけではなかった。関西の古豪・大商大には全国から有力選手が集っており、入学時にはすでに新体制がスタートしていた。

「野球部に入りたかったんですけど、入り方が分からなくて。そうしたら、履修していた授業の先生が野球部の部長先生だということが分かって、その思いを伝えました。4月の半ば過ぎと入部は遅かったんですけど、すんなりと入れたと思います」

 そのとき、福山は大きな賭けに出る。高校時代に二塁手だったことを・・・

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