春季キャンプ中にテスト入団した37歳のベテラン右腕だが、今や中継ぎ陣の中で欠かせぬ存在となっている。2度の屈辱からはい上がり、手に入れた現在の地位。そこには、かつてとは違う久保裕也がいた。 文=三浦正(スポーツライター)、写真=井田新輔、BBM 感謝や恩返しの気持ちしかない
これまで感じたことのない、純粋な思いでマウンドに上がっている。
「楽しいですね」と笑みを浮かべ、充実した表情を見ていると自然とこちらも明るい気分になってくる。
楽天の久保裕也は一球一球に気持ちを込め、強打者との緊迫した真剣勝負を満喫している。
プロ入り後に、こんな心持ちになる機会は少なかったという。抑えないといけないと意気込み、結果を求め、いつも重圧と戦いながら試合に臨んできた。
「プロになってからは、なかなか野球を楽しむことをゲームの中でできていなかった」と客観的に言った。
苦い経験が心境の変化を生んだ。2015年オフに
巨人、昨季終了後には
DeNAから戦力外通告を受けた。トライアウトや入団テストなど、現役続行をつかむ機会を模索し続け、今の立場に落ち着いた。
「また野球ができる環境をつくってもらって、それに対する感謝だったり、恩返しだったり、そういう気持ちでしかグラウンドに立っていない。ある意味、完全に開き直れている。変にプレッシャーは感じず、楽しくというのも変ですけれども、何とかチームのために、ちょっとでも貢献できればと思って投げているだけです」 11年のシーズン後に右股関節、翌年のシーズン中には右ヒジ靱帯の再建手術を受けた。一度、体にメスを入れただけで元のパフォーマンスを取り戻すことは困難だが、それが二つも重なった。焦る気持ちを抑えながら長いリハビリに耐え、真摯に野球に取り組み、14年に一軍復帰を果たした。この年には48試合に投げるなど復活への道筋をつくったが、翌年は状態が上がらず一軍登板なしに終わり、結果的に巨人を離れることになった。
「ケガというのはすごく大きなことだと思うし、なかなか・・・
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