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野球浪漫2018

阪神・岩崎優 人のため、チームのため 「ブルペンの中から選んでもらって登板するから、期待に応えたいと考えるのが当たり前」

 

歩幅をグーンと広くとり、低い体勢からボールを打者寄りでリリースする。阪神岩崎優の投球フォームだ。そのユニーク(唯一)なスタイルはアマチュア時代の環境によって作られた。静岡という土地柄や厳格な父親の教えによるところが大きい。当時があるからこそ野球に感謝でき、成長できる日々がある。
文=佐井陽介(日刊スポーツ新聞社) 写真=BBM

使ってくれる首脳陣のために、チームの勝利のために、どんな場面でもマウンドに上がる覚悟がある


ストイック過ぎる性分


 ストン──。街灯だけが頼りの住宅街、その一軒家からは夜な夜な同じ音が聞こえてきた。奇妙な現象の“犯人”は中学生時代の岩崎優だ。黙々と坂道を上がった先、その家のポストに紙切れを投函(とうかん)すると、Uターンして坂道を下って消えていく。静岡県・静岡市清水区内のある地域では365日、毎日同じ光景が繰り返されていた。

「中学校時代の軟式野球部コーチが、高校監督時代に甲子園に出たこともある人で。あるとき『毎日オレの家まで走ってこい』と言われまして……。中学生だった3年間ずっと、雨の日も風の日も台風のときも走り続けましたよ」

 自宅からコーチの家を経由する7、8キロのルート。サボっていない証拠として、必ず「◯月◯日◯時◯分」と時間を記した紙を投函する約束になっていた。翌朝、コーチが新聞の朝刊と一緒に紙切れをチェックする毎日。どれだけ勉強や練習で疲れていても休むことなく完走し、「最後まで頑張り続けたのはオマエだけだ!」と驚かせたという。

 男4人兄弟の次男。「自由にやらせてもらってきた」と言う割には、昔から自分を・・・

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