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野球浪漫2019

DeNA・国吉佑樹 よみがえった球威と自信 「正直10年もプロでやれると思ってなかった。だからこそ、今年1年はすごく大事」

 

196センチと恵まれた体型から投げ下ろす力強い真っすぐはプロでも一級品。ポテンシャルは誰もが認めるところではあるが、その力を試合で発揮できないシーズンが続いた。しかし、今年はちょっと様子が違う。オーストラリアの地で磨き直した真っすぐはオープン戦で自己最速を更新する159キロをマーク(※その後、公式戦で161キロを記録)。リリーフとして大暴れしてくれそうな雰囲気が漂う。
写真=BBM

昨年はカットボールを投球の軸としたが、今シーズンは本来の武器であったストレートでぐいぐいと打者を押し込むスタイルに変貌


決意の肉体改造


 決して大げさな表現ではない。あるセ・リーグ球団の関係者は、国吉佑樹の変貌ぶりにため息した。「助っ人が1人加わったぐらいの迫力がある」。公式プロフィルでは196センチ、103キロ。本人は「今は105〜06キロぐらいじゃないですか」とサイズアップを認めた。3月16日、ソフトバンクとのオープン戦で自己最速の157キロ。19日の阪神戦では158キロを計測した。さらに21日の日本ハム戦(すべて横浜)でも更新。9回に杉谷拳士から空振り三振を奪った直球が159キロをマークした。「真っすぐの質が良くなり、ファウルと空振りが取れるようになってきた。シーズン中に出せれば、という気持ちはあります」と160キロへの意欲は充実度の表れ。見違える姿で表舞台へ帰ってきた。

「肉体改造します!」と一大決心をしたのが昨年9月だった。鳴かず飛ばずだった現状打開への作戦。野球の練習を続けながら1日3時間、週5回のウエート・トレーニングを義務づけた。「野球選手じゃなくて、ボディビルダーのような生活ですね。脂肪を落とすことから始めたので、食事は相当制限しました」。ご飯や麺類を一切やめ、燕麦(えんばく)を脱穀、加工し、最近では健康食品としても注目されているオートミールが主食。お湯で戻し、少量のめかぶやキムチを入れて味にも工夫した。野菜はトマト、アスパラガス、ブロッコリーが中心。「ブロッコリーは冷凍じゃなくて、できれば生のものを茹でるのがいい。茹(ゆ)でてすぐに氷水で冷やす。栄養が抜けないし、色がきれいでおいしいんですよ」。独自で知識を蓄え、鋼のメンタルで実行した。「それしか食べられないんだ、と自分に言い聞かせてました」。

 たんぱく質は鶏のササミから。サラダチキンはヘビーローテーションだった。「僕としては計算外でした」と今だから笑って明かせるのが、9月25日の広島戦(マツダ広島)。「フィーリング。ひらめきとしか言いようがない」とラミレス監督にシーズン初先発を告げられたときのことだ。すでに減量期に入っていたため、登板前日の食事にひと苦労。市内のスーパーでツナ缶を買い、突貫で試合仕様のカロリー摂取をした。4回途中を2安打無失点。決死のゲームメークが5対3と快勝を呼び込んだ。

 過酷な生活の期間は今年1月までの5カ月に及んだ。体重は2キロ減り、反対に筋量が3キロ増加。成果を実感するのがうれしかった。ヒップラインは盛り上がり、腕も胸もムキムキに。オフに志願参戦した豪州ウインター・リーグの3カ月間で、新たな収穫もあった。

「技術的にというよりも、今の投球スタイルが確立できた。向こうの打者は真っすぐにタイミングを合わせて、初球からブンブン振ってくる。1球目からファウルを打たせられるかが大事。すごく勉強になりました」

 現地での出番は1試合1イニング、1週間で計2イニング。捕手のサインはほとんどが直球。直球でファウルを打たせ、カットボールで打ち取る組み立てにも納得した。

「いいイメージの感覚が徐々に戻ってきた。結果を求めなくていい場所にいられたのも良かった。日本では投げた球に対して結果が出る。そっちばかりを追い求めていたので」

 ともにリリーフの役目を与えられ、キャッチボール相手だったのが三上朋也。「日本のオフシーズンに調整に来ているイメージ。割り切って、トレーニングをしっかりやるのも大事」と助言にも背中を押された。

「向こうで感覚がハマって、そのままキャンプに入れた。あれだけ嫌だったキャッチボールが、いいイメージで投げられたんです。『いくらでも、誰とでもできますよ』って」

 視界良好。つらい経験も前向きに振り返られるようになった。

もがいた先の光明


 2016、17年はそれぞれ一軍で1試合、4試合の登板に終わった。不振の理由は明らか。生命線だった直球に自信が持てなくなったことだ。

「指に掛かる感覚がなくなってしまった。コントロールを気にして、リリースのことばかり考えて。もっと大事なことはほかにあるのに……。キャッチボールは真っすぐしか投げないから、その感覚で投げるのが気持ち悪くて。嫌いになりましたね。言い方は悪くなりますけど、病気みたいな感じでした」

 迷走する背番号65の主戦場は、もちろんファーム。17年のオフ、就任したばかりの大家友和投手コーチに思いをぶつけ・・・

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苦悩しながらもプロ野球選手としてファンの期待に応え、ひたむきにプレーする選手に焦点を当てた読み物。

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