PL学園高時代は世代を代表するタレントで、大きな期待を受けて飛び込んだプロの世界で残酷な現実を目の当たりにすることとなる。葛藤の末にたどり着いた新境地──。 文=氏原英明(スポーツジャーナリスト) 写真=高塩隆、BBM 異なる起用と期待
その役割のちょっとした変化が、
吉川大幾の2019年シーズンの在り方と言えるのかもしれない。
4年ぶりに
原辰徳を指揮官として迎え、大型補強を敢行した
巨人にとって、19年は優勝が至上命題といってもいい。その中で重要となってくるのが、レギュラーを補完する選手たちの存在だ。かつては
鈴木尚広(現巨人外野守備走塁コーチ)や
寺内崇幸(現BCL/栃木監督)などが担ったその役に、昨季から吉川大がついている。しかし、その役目はキャリアハイとなる94試合に出場した昨季と今季とでは、起用法も、期待感も、そして、結果への責任も異なってきている。
吉川大は役割の変化をこう語る。
「去年までは3対0でリードしている展開での、マギー(ケーシー・マギー)の代走などプレッシャーがそれほどかからない場面が多かったです。今年は、寿命が縮まるような絶対失敗できないケースでの起用なども増えてきました」 ユーティリティーな能力を持つ吉川大のような選手にはさまざまな出番がある。ただ、ベンチに数名が控えている中でも順列はあるものだ。昨季の吉川大がそうであったように、勝敗にはそれほど関係のない場面で起用される選手もいれば、かつての鈴木尚のように、試合の勝負どころで必ず起用される選手もいる。それは、いわば、ベンチの信頼度とも言える。19年が開幕したころの吉川大の起用は、昨季とは異なっていたのだ。今年で27歳を迎える吉川大がそれほどの立場になってきていることの証明と言えるだろう。
とは言え、その立ち位置の変化に対する期待を本人にぶつけてみると、少し苦笑いを含んだ表情に変わった。
「確かに結果を残せたときはうれしいことでもあるし、期待はうれしいですけど、緊張するし怖いです」 「怖い」という表現には、彼の弱さを感じる人もいるだろう。およそ高校時代は名門PL学園高で鳴らしてきた選手とは思えないほどの弱気な発言にも聞こえる。
ただそれは、決してプレッシャーから逃げたいというわけではない。自身のプロ野球人生を振り返ったとき、彼にとっては自身の置かれた立場をそう捉え・・・
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