気がつけばキャリア13年目に突入していた。かつてのホープはレギュラーの座をつかみ切れず、守備固めや代打が主な仕事。それでも準備は決して怠らず、ベンチではムードメーカーに徹する。必要とされる限り、ボロボロになるまで野球を続けるつもりだ。 文=菊田康彦 写真=井田新輔、BBM 先輩の姿に刺激を受けて
劣勢で迎えた
ヤクルトの最後の攻撃。打席に入るバッターに向け、
上田剛史はダグアウトから大きな声を張り上げていた。
2007年にヤクルトに入団して今年で13年目。そろそろベテランの域に差し掛かろうという男がこうしてベンチで大声を出すようになったのは、ごく最近のことだという。
「僕はそんなに率先して声を出すようなタイプじゃなかったんです。去年からなんですけど、声を出し始めたのも開幕してすぐじゃないんですよ。何試合か経ってからなんです」 きっかけは敬愛する大ベテラン、
青木宣親の存在だった。
「青木さんがメジャーから帰ってきて、何とかチームを引っ張っていこう、盛り上げようってやってる姿を見てからですね。要は最初は青木さんが一番、声を出してたんですよ。率先して声を出して、何とかみんなを奮い立たせようとしてるんです。しかも、青木さんは(レギュラーとして)試合に出てるわけだから、出てない僕らもやらなきゃって」 それまではそんなに大きな声を出すことはなかったのが、気がつけば
小川淳司監督が「上田は喉がガラガラになるくらい声を出してる。今年はよく出してるよ」と話題に出すほどになった。
もっとも、上田が自身にとって
「青木さんの存在は大きい」というのは、それだけではない。話は10年前にさかのぼる──。
「3年目(09年)に初めて一軍の舞台を経験して、二軍に戻ったときに、僕は・・・
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