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野球浪漫2019

阪神・能見篤史 不安でも誰かのために 「個人の成績よりも、チームに必要とされて投げたい」

 

今では強力救援陣一角として欠かせない存在になっている。不惑の年を迎えても凛(りん)とした姿勢を貫く。だがさまざまな葛藤と戦い、エースの座まで登り詰めた経験がある。そのすべてをチームのために、亡き父の思いも背負いマウンドに上がり続ける。
文=田中政行(デイリースポーツ) 写真=太田裕史、前島進、石井愛子


必要とされる場所で


 5月28日、能見篤史は40歳の誕生日を迎えた。シュッとしたスタイルに、マウンドの立ち振る舞いも若々しい。5月24日のDeNA戦(横浜)では、球速150キロを計測した。夏の暑さをしのぎ、冬の寒さに耐え、真っすぐ伸びる大樹のように、チームに安心感を与える存在。衰えは……まだ見えない。球界でいま、「最も美しい」と称されるワインドアップから糸を引くように、白球が捕手・梅野隆太郎のミットに伸びる。陰るどころか、“新天地”となるセットアッパーのポジションで、試行錯誤の日々を楽しんでいるようにさえ見える。6月1日現在、主に6、7回の勝ち試合を任され、20試合に登板。5月15日の巨人戦(東京ドーム)で丸佳浩に3ランを浴び、防御率こそ4.60に上がったが、登板10試合連続無失点など、安定した投球が光る。

 これまで3度、開幕投手を務めるなど、長くエースとしてチームを支えた。だが、この話題になるたびに、能見はマウンド上で見せるポーカーフェースが崩れる。「ポジションに対するこだわりはもともと、ないから」。2005年に入団してからは「負けない投手」を目指し、チームのためを信条とした。積み重ねた102勝のうち、救援勝利はわずか6勝。それでも「先発もリリーフも変わらない」と言う。

「みんな僕が先発にこだわっていると思っているようだけど、極端に言えばこだわってやってきたわけじゃない。そこに違和感を持っていた。プロの世界に入ってずっと思っていることは、個人の成績よりも、チームに必要とされて投げたいということ。場所はどこだっていい」

 先発投手、中継ぎ投手である前に、プロの投手として戦う姿を誇りにした。だから、1本の電話が何よりうれしかった。昨年5月下旬のことだ。同月11日の広島戦(マツダ広島)で2敗目を喫し、翌12日から二軍再調整を続けていた。そんなある日の練習後、携帯電話が鳴った。金本知憲監督(当時)からだった。

「能見・・・

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苦悩しながらもプロ野球選手としてファンの期待に応え、ひたむきにプレーする選手に焦点を当てた読み物。

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