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野球浪漫2019

巨人・大竹寛 貢献と、恩返しと 「今年のチームは優勝に向けていい位置にいます。今年こそは、とみんなが思っている」

 

FA移籍後、6年目のシーズンを迎えている。昨オフには戦力外も覚悟したが、原辰徳監督と球団の信頼は変わらなかった。ポジションを変え、その思いに応えるために、身を粉にして投げ抜くことを誓う。
文=福島定一(スポーツライター) 写真=高原由佳、BBM


基本に立ち返る


 あの懐かしいメロディーが帰ってきた。試合の中盤から終盤、東京ドームに流れてくる『愛は勝つ』(KAN)。歓声と拍手が自然とわき起こる。歓声を背に受け、一塁ベンチから駆け足でマウンドに向かうのは、大竹寛だ。

 5月で35歳になった。「一軍で投げないと、チームに貢献することはできないですからね。毎日、毎日、どんな場面でも、結果を求めて、貢献できるように投げています」。練習後の取材にも真摯(しんし)に応じる姿勢に報道陣の中にもファンは多い。「貢献」という言葉を何度も繰り返すのが印象に残る。

 今季2度目のチャンスは6月21日のソフトバンク戦(東京ドーム)で回ってきた。先発の高田萌生に代わり、一軍に昇格。チームは交流戦の優勝争い真っただ中にあった。4点差を追っていた7回にマウンドへ。今季初登板はビハインドの場面だったが、一番の上林誠知からという上位打線を三者凡退に斬って取った。「よし!」と言わんばかりの控えめなガッツポーズをつくり、何度も何度もうなずきながらベンチに小走りで向かう。ベンチ前で野手を待つ姿は変わらない。タッチで迎え、感謝の意を伝えた。

 広島時代には4度の2ケタ勝利を達成している正統派右腕。「復活」という表現を使うにはまだ早く、違和感もあり、本人にも失礼だろうが、明らかに球威が戻ってきた。先発から中継ぎへと働き場が変わり、ペース配分を考える必要もなくなったのだろう。ストレートの球速は147〜148キロを計測する。「真っすぐはいいと思います。基本ですが、やっぱり真っすぐあっての変化球ですからね」。低めのストレートには伸びがあり、垂れることなくズバッと決まる。打者が首を振りながらベンチに戻るシーンもあった。差し込まれているような印象も持つ。

 実は今季は6月1日にも一軍に昇格していたが、登板機会のないまま2日後の3日に出場選手登録を抹消された。チーム事情による入れ替えだったが、球団関係者は「久々の一軍(2018年は2試合の登板のみ)に気合も入っていだただろうから、ショックだったとは思う」と振り返る。今季は7月末の期限までに、例年にないほど12球団で活発にトレードが行われており、ネット上では「トレードでは?」という根も葉もないウワサまで飛び交ってしまった。ただ、大竹自身は・・・

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