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野球浪漫2019

阪神・高山俊 前進あるのみ 「『そんなにうまくいかない』ということを知れたのは良かった」

 

4年後、誰もが阪神の中心打者として活躍していると思っていた。2016年、ルーキーイヤーの活躍を見ればそう思う。だが実際にはもがき苦しみ、自分を見失ったプロ2年目と3年目だった。その苦しんだ2年間で見えたものを糧に新しい自分を探し続けている。後ろを振り返ることなく、前へ、前へ──。
文=酒井俊作(日刊スポーツ) 写真=前島進、宮原和也

2019年9月11日 ヤクルト戦[甲子園]5回裏、小川から右中間へソロ本塁打を放つ


自分の形を作る


 野球取材を始めて17度目のシーズンだが、以前から「天才」と書くまいと自戒してきた。軽はずみに使う言葉ではない。プロ野球の大舞台。ファンを魅了する、卓越した技術へと昇華させるのに、どれだけの歳月を要するのか。取材者は道のりの険しさを想像することはできても、本当の厳しさを、身をもって知ることはできないだろう。壁に当たって苦悩し、乗り越える。血のにじむような鍛錬を重ねるトッププレーヤーに対して物知り顔で「天才」と表現するのは、おこがましいと思うからだ。

 高山俊には、とかく「天才的な」という枕ことばがついて回ってきた。輝かしい球歴が、26歳の青年を「エリート」といったイメージで縛りつけてしまう。日大三高(西東京)で夏の甲子園優勝。明大で東京六大学リーグ歴代最多安打。ドラフト1位で入団した阪神で新人王。「金看板」を掲げるには十分な実績だ。だが、実像は違う。プロに入って4年間、何者かになるため、試行錯誤して戦ってきた。

 普段から発する口数は多くない。それだけに淡々とつむぐ言葉には強い意志が宿る。「いままで自分の形がブレてきた。だから、自分の形を作っていきたい」。成功も失敗も、すべて受け止める。とりわけ、低迷した昨季までの過去2年間、暗闇の中でもがいた痕跡(こんせき)からは、強烈な意地が伝わってくる。

「前向きにとらえるなら『そんなにうまくいかない』ということを知れたのは良かった。ずっと二軍にいました。『二軍に行きたくない』と思ってやるのも1つです。苦手なところを攻められたので自分の苦手なコースが分かったのも1つ。精神的に追い込まれてやると結果が出ないから、やっぱり自分を信じてやらなきゃいけないと知れたのも1つ。次につなげる考え方をしないと意味がない。2年目、3年目は本当に厳しい声も聞きました。でも一軍で戦うのが・・・

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