中日を戦力外となりDeNAに加入したのが2年前。今季、夏場にAクラスに浮上し、巨人と首位を争ったDeNAの中で、リリーバーとして武藤祐太の存在が頼もしかった。一度は野球をあきらめかけていた右腕が、新天地で印象的な復活を遂げた。 取材・文=石塚隆 写真=BBM 8月28日のヤクルト戦では延長12回にマウンドの上がり無失点。チームのサヨナラ勝ちを呼び込んだ
社会人でのプレーが転機に
もう終わりかもしれない。そう心が折れそうになったのは一度や二度のことではない。
「もしも、あのまま野球をあきらめていたら、今の僕は何をやっているのかなと思うときがあるんです……。一度、戦力外と言われ、そのまま終わってしまう選手が多い中、またこうやって野球をやらせてもらえて、球団には感謝しているんです」 横浜DeNAベイスターズの武藤祐太は、静かに、だが内なる熱を帯びながらそう語った。
ついに訪れた歓喜の時、忘れかけていた勝利の味、武藤は1541日ぶりの勝ち投手になった――。
記憶に残る激しい試合だった。
8月28日のヤクルト戦(横浜)、DeNAの先制で始まった試合はシーソーゲームとなり、8回以降6対6の膠着(こうちゃく)状態のまま12回の攻防へともつれこむ。
DeNAにとっては首位巨人を追う大事な試合、最後の砦としてマウンドに上がったのは武藤だった。先頭の
太田賢吾にヒットを許すと、続く
廣岡大志が初球でバントを決め一死二塁。次の
山田哲人を申告敬遠で歩かせると、代打の
荒木貴裕がセンターフライを打ち二死一、三塁。さらに
雄平の場面で山田に盗塁を決められると、再び申告敬遠をして満塁になった。ここまで武藤が投じたボールはわずか5球だったが、永遠とも思える濃密な時間が流れていた。そして迎えたバッターは今季ヤクルトにあって存在感を示してきた
村上宗隆だ。一打勝ち越しの緊張の場面、武藤は一切の感情を表に見せることなく淡々とマウンドをさばき、投球フォームに入った。
放たれたボールはど真ん中へ向かっていくと・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン