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野球浪漫2020

阪神・坂本誠志郎 女房役に徹する 「キャッチャーって嫁さんと一緒。この人と一緒にいたい、任せられると思われる人間にならないといけない」

 

正確なキャッチング、抜群のフットワーク、配球の面でも申し分ない。打撃も意外性があり勝負強い。これだけ長所があれば、正捕手は間違いないところだが、阪神では2番手に甘んじている。ライバルは日本の補殺王で、ゴールデン・グラブ賞捕手。だが、そういう存在がいるからこそ、しっかりと自分と向き合い、進化を目指す日々を送っている。
文=佐井陽介(日刊スポーツ新聞社) 写真=BBM (文責=4月1日現在)


人間観察が好き


 坂本誠志郎は運ばれてくるチャプチェにさえも目を光らせた。

 昨年、阪神のチームメートと焼き肉屋を訪れた際のひとコマだ。大先輩の鳥谷敬(現ロッテ)が何げなくオーダーした一品に反応。「トリさん、なんでチャプチェ頼んだんですか?」。会心の質問を決めた……つもりだった。

「トリさんってすごくストイックな方じゃないですか。白米じゃなく玄米を食べたり、食事にもすごく気を使っている方なので、チャプチェにも何か意味があるに違いないと思ったんですけど……」

 唐突に問われた鳥谷は一瞬の間を空けた後、「ごめん、ただ食べたいから頼んだだけだわ」と苦笑いしたという。照れくさい思い出だ。



「もともと人間観察は好きなんです」

 時には裏を読み過ぎることもある。それでも坂本は思考を止めない。「だって、あれだけすごい人たちから学ばないなんて、もったいないじゃないですか」。シンプルな向上心が脳を常にフル稼働させる。

 俳優の武田鉄矢が、かつてテレビ番組で語った金言を大切にしている。

「あらゆる人から学ぼうと思う心構えの人は、あらゆる人から学べる」──。

 坂本はこの言葉に深く納得。グラウンド内外を問わず、学習のアンテナを張り巡らす毎日を送っている。

「以前、野村克也さんが『監督業は気づかせ屋だ』とおっしゃっていた。選手に足りない部分、成長する部分を気づかせたら、選手は勝手に吸収しようとし始める。そういう意味では、僕は孝介(福留孝介)さん、球児(藤川球児)さん、トリさんと、気づかせ屋になってもらえる先輩に恵まれていた。先輩たちの言葉、行動の裏には必ず何かがあると思って、いろいろ考えてきました」

 ではなぜ、そこまでして何かを吸収し続けようとするのだろうか。「僕は・・・

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