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野球浪漫2020

DeNA・柴田竜拓 当たり前を超えてゆけ 「自分のレベルが低くて、毎日が不安。守備はもちろん、明らかにスイングスピードは遅かった」

 

背番号「31」を背負った小さな背中が、大きく見える。流れを変える内野守備は味方の窮地を何度も救ってきた。それに加えて今季は、打撃でのレベルアップが著しい。ソト大和で固定と見られていたDeNAの二遊間で、レギュラー争いに割って入る存在感を見せている。
文=石塚隆 写真=小山真司、BBM


 それは球団史上初となる鮮烈なデビュー戦だった。

 2016年3月25日に行われた広島との開幕戦(マツダ広島)、横浜DeNAベイスターズの柴田竜拓は、ルーキーながら七番セカンドでスターティングメンバーに名を連ねていた。

 2回表一死二、三塁の絶好の場面で訪れたプロ初打席。クリス・ジョンソンの初球、145キロのストレートを柴田は迷いなく振り抜いた。鋭い打球は二遊間を抜けセンター前で弾み、2点タイムリー。これが決勝点となり、ベイスターズを率いて1年目のラミレス監督にとって初勝利となった。柴田と新監督にとって記念すべき船出の決勝打、ルーキーが開幕戦でV打を放つのは、球団の歴史上、初めての出来事であった。

 最高のシナリオとなった約4年半前の一打を柴田は思い出す。

「何で打てたんだろうって……」

 苦笑をしながら柴田は続けた。

「小学校から大学時代までを通じ、最初から活躍したことってなかったんですよ。もちろん当時はうれしい気持ちはありましたが、今考えれば、たまたまだったと思います」

 謙遜しつつも、次の瞬間、声色を低くしぽつりと言った。

「だからこそ、続かなかったんだなって……」



 岡山県岡山市出身の柴田は、野球をやっていた父に影響され、幼いときから野球に親しんでいたという。初めて少年野球チームに所属したのは小学校3年生のとき。実は地元にチームがなくソフトボールをやるか野球をやるかで悩んだことがあるという。もしソフトボールを選んでいたら、今の姿はなかったかもしれませんね、と尋ねると・・・

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