打者に向かえば闘志満々、気合とともに投げ込んでゆく。その一方で、ピッチングスタイルは、何種もの変化球を駆使する技巧派だ。ときに熱く、ときに冷静に。変幻自在に真っ向勝負。ある意味では、さまざまな魅力を兼ね備えた投手と言えるのかもしれない。 文=坂上俊次(中国放送アナウンサー) 写真=松村真行、宮原和也、BBM 187センチ、95キロの恵まれた体格で、140キロ台後半のストレートと、カットボール、カーブ、スライダー、ツーシーム、フォーク、チェンジアップと、さまざまな変化球を投げ分ける
すべてに全力、成長遂げた学生時代
どこまでも負けず嫌いである。打者を抑えてのガッツポーズが印象的だが、打たれたときの悔しがる姿も半端なものではない。
「勝負に負けるのは嫌です。負けたくはありません。野球以外のスポーツでも負けるのが嫌でした。オフの野球教室でも、小学生相手に手加減なしで抑えにいくこともあるくらいですから(笑)」 若干のリップサービスも含んではいそうだが、この魂が、
九里亜蓮の本質である。マウンドで闘志をみなぎらせるのはもちろん、打席でも必死でボールに食らいつき、全力疾走も怠らない。この姿がゲームの流れを何度となく変えてきた。2016〜18年のカープ3連覇のときも、そうである。先発でのゲームメークや勝ちに入るときのピッチングだけではない。劣勢の場面での気迫に満ちたリリーフ登板が「逆転のカープ」の序章にもなってきた。
少年時代は、あらゆるスポーツに全力だった。野球だけでなく、ローラースケートやアメリカンフットボールなどさまざまな競技にトライした記憶がある。なかでも、バスケットボールでは、負けず嫌いの心と天性の運動能力をいかんなく発揮した。
少年時代、一緒にバスケットボールを楽しんだ記憶を持つ男がいる。鳥取県米子市で同じ中学校に通っていた
広島ドラゴンフライズ(B1リーグ)の司令塔・岡本飛竜である。「うちの近所でバスケットボールをやっているときに、(2学年上の)九里さんがやってきて一緒にやった記憶があります。体は大きくて、スピードもありました。そのまま続けていたら、素晴らしい3番のプレーヤー(チームの得点源のポジション)になっていたのではないかと思います」
体格にもハートにも恵まれていた。あらゆるスポーツに挑戦する探求心もあった。ただ・・・
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