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野球浪漫2020

巨人・坂本勇人 伝統の継承者 「想像していた以上にファンの皆さんが期待をしてくれていた。あの雰囲気というのは、一生忘れないと思います」

 

2007年のデビューから14年、ついに節目の大記録に到達した。キャプテンとしてもチームをリーグ連覇へけん引。名実ともにジャイアンツの顔となった伝統の継承者の、知られざるストーリー。
文=福島定一(スポーツライター) 写真=榎本郁也、小山真司、BBM


コロナ禍の偉業達成


 待ち焦がれた瞬間が訪れた。坂本勇人の通算2000安打に、コロナ禍の球場からは歓声の代わりに温かい拍手が注がれる。偉業達成に敵味方は関係ない。ヤクルトファンが陣取る左翼スタンドからも同じように背番号6に惜しみない拍手が送られた。

「朝、起きてから食欲もなくて、今日一日緊張していたんですけど、1打席目にヒットが出てくれました。僕が想像していた以上に、球場のファンの皆さんが期待をしてくれていたので。あの雰囲気というのは、一生忘れないと思います。ここまで支えてくださった監督、コーチ、チームメート、チームスタッフ、ファンの皆さんに本当に感謝しています」

 11月8日のヤクルト戦。場所は本拠地・東京ドームだった。通算2000安打まで残り1本で迎えた一戦で、球場にはいつも以上に坂本のグッズを手にしたファンが目立った。打席に向かうだけ、守備に就くだけで、携帯カメラのシャッター音があちこちで鳴る。両手を合わせ祈るファン。タオルで口元を覆い、いまにも泣きそうな表情で見守る者もいた。球場は、異様な緊張感に包まれていた。

 迎えた1打席目。カウント1ボール2ストライクからの4球目だった。外角に逃げるように変化する128キロのスライダーをバットがとらえる。下半身でしっかりと粘り、泳がされることはない。最後は左手一本で巻き込むように、左翼線にライナー性の打球を運んだ。行方を確認し、表情を緩めながら二塁ベースに到達した坂本は、両手を頭上の上で何度も叩いた。ナインはベンチ前に並び、ガッツポーズをつくって拍手。原辰徳監督や首脳陣もベンチ前に整列し、偉業達成を称えた。

 試合は一時中断。巨人からは中島宏之、ヤクルトからは親交の深い山田哲人が花束を持ち坂本のもとへ駆け寄る。プロ野球史上53人目、球団の生え抜き選手の2000安打達成は川上哲治長嶋茂雄王貞治柴田勲阿部慎之助に次ぐ6人目。31歳10カ月での到達は、1968年の榎本喜八(東京)の31歳7カ月に次ぐ年少記録となり、右打者に限れば、77年の土井正博(クラウン)の33歳6カ月を抜く史上最年少での達成となった。坂本への拍手はいつまでも鳴り止まない。

「坂本勇人選手 2000安打達成」──。東京ドームの電光掲示板も燦然(さんぜん)と輝いていた。



 2006年9月25日。のちに球史に名を刻む少年がプロ入りを果たした。高校生ドラフト1巡目指名で堂上直倫(当時愛工大名電高、現中日)の抽選を外した巨人が、外れ1位で光星学院高の内野手だった坂本の交渉権を獲得する。授業中に朗報を受け・・・

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苦悩しながらもプロ野球選手としてファンの期待に応え、ひたむきにプレーする選手に焦点を当てた読み物。

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