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野球浪漫2021

中日・高橋周平 感謝と覚悟と 「やるなら本気。それが高橋家の流儀」

 

入団からしばらくは不本意なシーズンが続いたが、攻守で存在感を発揮し、不動のレギュラーとなった。背番号3を背負ってチームを束ねるキャプテンでもある。野球ができる喜び、試合に出場できる感謝の気持ちを忘れず、プロ10年目の今シーズンも全力で戦い続けている。ミスタードラゴンズと呼ばれるような選手を目指して。
文=川本光憲(中日スポーツ) 写真=毛受亮介、宮原和也、BBM

ドラゴンズのサードと言えば高橋周平。努力の末につかんだポジションだ


3年目根尾の教育係


 気づくと、ポカーンと口を開けた後輩がそばに立っていた。主将3年目でプロ10年目を迎えた中日・高橋周平。昨季、自身初めて打率3割超の.305をマーク。2年連続でゴールデン・グラブ賞にも輝いた。年明けの自主トレで新たに加わった任務はレギュラー獲りを狙う根尾昂の教育係。場所は大阪府内。年長者の大島洋平から仰せつかっていた。

「根尾は僕が何とかします」

 記者にこう宣言したとおり、とことん向き合った。ピュアで、口下手で、不器用。どうするかは説明できなくても「何とかします」は本音。背番号3は背番号3なりの形でアドバイスを送り続けた。ある日のこと。決められたメニューを終えた根尾は「素振りしてホテルに戻ります」と言った。それから数分、高橋周はすでに根尾は立ち去ったと思い込んでいた。早合点が思わぬ方向へ……。言葉を選ばず、ストレートに思いを表現した。

「素振りだけじゃダメでしょ。ボールを打たなきゃ、分かることも分からないじゃん」

 聞いた根尾はバツが悪そうに立ち尽くす。高橋周は苦笑い。

「あ、聞こえちゃった? でもな、打ったほうがいいと思うぞ」

 後輩は素振りからシフトチェンジ。打撃マシンに向き合ったのだとか。

 言葉のチョイスは雑でも、愛が伝われば関係性は良好となる。本音一辺倒の主将の言動に、根尾も親しみを覚えていた。1月18日は高橋周の27度目の誕生日。コロナ禍とあって、個室があり、ごく少数で訪れた飲食店でささやかな誕生会が開かれた。

 根尾から「誕生日おめでとうございます。飲んでください」とお酒を勧め続けられた。当時の記憶として根尾は「周平さん、お酒に強いですから。僕はまだ20歳になったばかり。飲める量を把握するほどいただいたことはありません」と語った。高橋周にとって根尾はかわいい後輩であっても、飲ませる対象でもなければ、そんな時代でもない。「ほどほどでいいんですよ」。ジョッキを合わせる仕草をしたのは乾杯だけ。適量で済ませた。

 後輩に何かを強いることはない。自らが入団間もないころは・・・

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