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野球浪漫2021

ヤクルト・川端慎吾 完全復活への歩み 「打つたびに自信がちょっとずつ戻ってきている感じがあります」

 

天才的なバットコントロールを誇り、2015年のリーグ優勝に大きく貢献した巧打者だ。しかし、その後は腰痛に苦しみ、満足にプレーすることはできなかった。今季、代打の切り札として復活を遂げたように見えるが、「完全復活」と言えるのはまだ先だ。
文=菊田康彦[スポーツライター] 写真=内田孝治、BBM

今季は代打での出場が多い。ここ一番に懸けている


復活の狼煙


 カーン!! 乾いた音を残して舞い上がった打球が、懸命に追うライトの頭上を越える。走りながら「抜けてくれ! 抜けてくれ!」と叫んでいた川端慎吾は、勝ち越しの走者が生還するのを見届けると、二塁ベース上で小さくガッツポーズをつくった。

 3月30日のDeNA戦(横浜)。山崎康晃が投じた内角高めのボール気味のストレートを力強く弾き返し、ヤクルトに今季初勝利をもたらした決勝のタイムリーツーベースは、“完全復活”への手応えを感じさせるに十分なものだった。

「あそこ(の球)をしっかりたたけたっていうのは、去年だったら絶対できてなかったと思います。しっかり腰が回って、力が伝わって強いスイングができているから、ああいうふうに反応できたのかなと思います」

3月30日のDeNA戦[横浜]に代打で登場し、右翼越えに決勝適時二塁打を放った


 市和歌山商高(現市和歌山高)から高校生ドラフト3巡目で入団して、今年で16年目。2014年から3年連続で打率3割をマークし、初めて優勝の美酒を味わった15年には打率.336で首位打者に輝いただけでなく、最多安打、ベストナイン、ゴールデン・グラブ賞、さらにクライマックスシリーズMVPと、数々の栄誉を手にした。

 まさに順風満帆。一点の曇りもないように見えたプロ野球人生が暗転するのは、17年春。沖縄・浦添の春季キャンプでのことだった・・・

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