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野球浪漫2021

DeNA・阪口皓亮 誰がために腕は振る「死ぬ気で投げて、死ぬ気で稼いで、しっかりと恩返しをしたい」

 

今季からDeNAで指揮を執る三浦大輔監督に初勝利をもたらしたのは、21歳の長身右腕だった。同時に彼自身にとっても待望のプロ初白星でもあった。先発ローテ候補と期待されながら結果が出ない日々。苦悩と葛藤。それでも、高卒4年目の若者はプロの厳しさを味わいながらたくましさを身に着けている。
文=石塚隆 写真=小山真司、大賀章好、BBM


大阪から北の大地へ


 勝利が確定した瞬間、すべてから解放され、熱い涙が頬をつたった。

「これまでの野球人生で、一番うれしかった“勝ち”でしたね……」

 横浜DeNAベイスターズの阪口皓亮は、4月4日の広島戦(横浜)でのプロ初勝利を振り返った。

 この日の勝ちは阪口にとってはもちろん、今シーズンから指揮を執る三浦大輔監督にとっても記念すべき初勝利だった。シーズン開幕から2分けを挟んでここまで6連敗を喫しており、9戦目にして訪れた待望のチーム今季1勝目。三浦監督は苦しみの果てにつかんだウイニングボールをそっと阪口に手渡した。

 高卒4年目の阪口は、昨季イースタンで勝率1位のタイトルを獲得するなど、ファームを指揮していた三浦監督が信頼を置くピッチャーであり、ぜひとも台頭してほしいと考えていた、いわば“三浦チルドレン”だ。ゆえに阪口の初勝利は、指揮官にとっても格別なものだった。

 しかし阪口は決して浮かれることなく、口元を引き締め言うのだ。

「4年かかって、ようやく勝てました。あらためて先発ピッチャーとしてチームの一員として役に立つことができて、やっとスタートラインに立てたかなって」

 ようやくプロとして第一歩を踏み出すことができた。自分にはやらなければいけないことがある。チームのリーグ優勝や日本一に貢献することはもちろん、これまで支えてくれた家族を幸せにすること。21歳の若者は、心にそう誓い、今日も白球を投げ込む──。

 大阪市出身の阪口が野球を始めたのは小学校2年生のとき。2歳上の兄・達朗さんの影響を受けたからだ。

「最初はサッカーをやりたいと思って両方体験したんですけど、野球はコーチが優しかったこともあって選んだんです。あと、しょうもない理由なんですけど、スパイクが土をかむ感覚がすごく好きだったんですよね。そんなことがきっかけで野球って楽しいなって思うようになったんです」

 感覚的で曖昧模糊(あいまいもこ)とした理由がいかにも小学生らしい。その後・・・

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