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野球浪漫2021

広島・島内颯太郎 157キロの原点「大学の4年間で体重も10kg、球速も10キロアップできました」

 

クセのないきれいなフォームから投じるストレートはMAX157キロ。そのスピードを生み出すフォームの原点には、父の教えがあった。快速球に集まる救援投手としての高い期待。ただ、最速だけで決まるものでもないのがまた野球。どんな状況でもそのフォームをぶらさず投げ切るための戦いが続く。
文=坂上俊次(中国放送アナウンサー) 写真=佐藤真一、田中慎一郎、BBM

きれいなフォームからMAX157キロのストレートを繰り出す。それだけに、リリーフ投手として掛けられる期待は大きい


「大きく投げなさい」の教え


 車にはグラブとボールが積まれていた。キャッチボールができる公園や空き地があれば、親子はキャッチボールを繰り返した。

「大きく投げなさい。腕を大きく回しなさい。大きなフォームで投げなさい。リリースで力を入れるように。それまでは力を抜いておくこと」

 父・賢二さんは、社会人野球・五大化学でプレーし、投手経験もある。現在は福岡ポニーリーグ九州連盟に所属する福岡スーパースターズで投手コーチを務め、次代を担う選手たちにも愛情あふれる指導を続けている人物だ。幼少期こそゴムボールにプラスチックバットだったが、次第にその指導が熱を帯びてくるのは極めて自然な流れであった。

 息子に光るものを感じた瞬間は鮮明に記憶している。「小学校3年のとき、子ども同士でボールの投げ合いをしている光景を見かけました。フワフワのボールでしたが、当て合いっこのようになり、息子がぶつけられて投げ返すという場面がありました。このときの投げ方の良さです。こいつ、もしかしたら。そう思ったのを覚えています」。

 小学校3年で本格的に野球を始めると、翌年春には練習試合でマウンドに上がった。このときも父は驚いた。「いきなりの登板でしたが、普通にストライクを投げていました。ある程度の形にはなっていたと思います」。

 しかし、すべてが順調なわけではなかった。体の細さである。体重は、高校入学時で約60kg、大学入学時で約70kg。球速は、中学3年で110キロ、高校1年で120キロ、高校のMAXが142キロだった。好投手なのは間違いないが、突出した数字ではなかった。

 180cm、78kg、プロ野球選手名鑑の数字は威圧感を与えるものではない。実直・謙虚・真面目(まじめ)、周囲の人物評は一致したものがある。そんな男が、背筋を真っ直ぐに伸ばし、静かにマウンドに上がる。すると、157キロの快速球で打者をねじ伏せる。

 マウンドでのたたずまいとボールの勢いのギャップもたまらない。島内颯太郎。彼のピッチングがもたらす爽快感は、試合の流れを何度となく一変させてきた。

 ルーキイヤーの2019年は25試合、翌20年は38試合、今シーズンも前半戦だけで16試合に登板している。もはや、島内はカープのリリーフ陣において、欠かせない存在になっている。

 一方で、「こんなものじゃない」という声もある。代表的、かつ、熱を帯びた声を紹介したい。カープでコーチ経験もある野球解説者・笘篠賢治氏である。彼は・・・

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