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野球浪漫2021

楽天・島内宏明 自然体で、貪欲に「モチベーションを高く設定しないと、プロ野球の世界では稼げない」

 

自然体で、貪欲にドラフト6位で楽天に入団してから10年が経過した。その年の最下位指名ながら、今では打線に欠かすことのできない存在となっている。独特なコメントを発する選手として話題となっているが、自身のプレースタイルがブレることは決してない。たどってきた道に、その根拠が隠されていた。
文=田口元義(フリーライター) 写真=桜井ひとし、BBM

楽天・島内宏明


1年でも長く


 ×から〇に変わっていた。

 楽天の本拠地・楽天生命パーク宮城での第2戦。監督推薦で自身初のオールスターに選出され、パ・リーグの三番としてスタメン出場の島内宏明の目元には、太陽光などの眩(まぶ)しさを軽減するとされる「アイブラック」がペイントされていた。

 右目の下に「×」、左目の下には「〇」。ソフトバンク松田宣浩の提案だと言われているが、“球宴”オールスターならではのユーモア溢(あふ)れる演出で打席に立った島内は、バットでも魅せた。8回の勝ち越し二塁打を含む3安打3打点。第2戦のMVPに選ばれ、お立ち台に上がった殊勲者のアイブラックは、両目ともに「〇」に変わっていた。

 島内の好調なパフォーマンスはオールスターだけではない。まさに「〇」を地で進む快進撃を、シーズンでも披露している。

 楽天では主に四番を任され、前半戦終了時点でリーグトップの66打点。得点圏打率も.368と、勝負強さを誇示し続ける。

 31歳。プロ10年目の節目のシーズンで、初のタイトル獲得へと邁進するわけだが、レギュラーとしてチームからの信頼感が高まるほど、島内のこんな言葉を思い出す。

 表情は柔和だが、語調はしっかりしている。強い意思表示が伺(うかが)えた。

「30歳を超えても野球をやれていること自体、不思議なくらいで。今はその喜びをかみ締めながら、『1年でも長く野球をしたい』って気持ちでやってます、ふふふ」

「鶴の一声」でプロへ


 アマチュア時代から華やかなキャリアを歩んではいる。当時から非凡な才能もあった。ただし、貪欲ではない。それが、島内だった。

 小学3年から本格的に野球を始めると、すぐに投手として頭角を現した。中学3年では、全小松ボーイズ(現小松ボーイズ)のエースとして全国大会出場を果たしている。

 郷里の石川県を中心に有力校から声が掛かる中、島内は「遊学館に行きたかった」という。それが最終的に星稜高を選んだのは、当時のコーチで現監督の林和成が“三顧の礼”の如く、チームの魅力を伝えてくれたことに惹(ひ)かれていったからだそうだ。

 当時の石川県は、島内の本命だった遊学館高と金沢高の「2強」の図式を形成しており、星稜高は低迷期にあった。島内自身、高校入学後に左肩を痛め投手を断念したが、のちに巨人に入団する高木京介がエースを務めるなど戦力が整い、3年時の2007年には9年ぶりの夏の甲子園出場。島内も主将として「一番・一塁」で聖地を踏み、2安打と気を吐いたが初戦で長崎日大高に敗れた。

 貪欲ではないが実績は残す。そんな島内が・・・

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