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野球浪漫2021

巨人・桜井俊貴 懸ける思い「早く状態を上げて、チームの勝利に貢献したいです。それだけしかない」

 

シーズンも終盤、2016年のドライチ右腕がもがき、苦しんでいる。ポテンシャルの高さは首脳陣も認めるところだが……。ポストシーズンでチームの戦力足り得るため、現状の打破に全力を注ぐ。
文=福島定一(スポーツライター) 写真=BBM


理想とする形を求めて


 シーズンも佳境を迎えた10月初旬、巨人は逆転優勝にわずかな望みをかけて、残り試合に臨んでいる。そんなチームの輪から離れ、桜井俊貴はファームで黙々と汗を流す。

「フォームの安定感を求めています。姿勢を正すような感じです。軸がぶれないようにしたいと思っています」

 9月27日、出場選手登録を抹消。実に、今季5度目(前半戦終了に伴う抹消含む)の抹消だ。「投げているときに体に軸がないような感じがしていました。だからどうしてもコントロールが乱れてしまうところがありました」。一軍での直近5試合、計7イニングで7四球。その原因は投球フォームにある。感覚を大事にし、模索を続ける日々。調整期間には走り込みの量も増やした。下半身を鍛え直し、もう一度、理想とする形を追い求めている。

 今季はここまで29試合に登板し、1勝0敗6ホールド。一、二軍を往復する生活に「情けないというか……。何とかしないと、という思いです」と現状打破に全力を注ぐ。

2015年秋のドラフトでは巨人から単独1位指名。立命大でのリーグ戦通算56試合登板、28勝8敗、防御率1.10、通算306奪三振が高く評価された


 2015年(16年入団)のドラフト1位右腕。高橋由伸監督就任1年目のルーキーとしても注目を集めた。キャンプ、オープン戦をこなし、順調に開幕先発ローテーションにも名を連ねた。そして16年3月30日のデビュー、DeNA戦(横浜)。ここで歯車は狂った。5回途中4失点KO。83球での降板となったが、この試合で右ヒジに違和感を訴え、翌31日には出場選手登録を抹消された。「やってしまった、という感じでした。ショックでした」。三軍での長く苦しいリハビリ生活に突入する。

 華やかな一軍の舞台。その東京ドームに通い続けるはずが、主戦場が神奈川県川崎市のジャイアンツ球場に変わった。ノースロー調整を経て、ネットスローから再びボールを握る。再発を防ぐため、ゴムを使ったインナーマッスルの強化や走り込みの日々に没頭した。7月に三軍でのマウンドを踏むと、イースタン・リーグ最終戦、9月25日のロッテ戦(ジャイアンツ)で約6カ月ぶりの公式戦に登板。1回1安打無失点に抑えた。最速も145キロまで計測した。しかし活躍を期待された1年目、一軍での登板は、わずか1試合だけに終わる。

 オフには驚くべきニュースが飛び込んできた。背番号21がたった1年で36に変更。「21は左投手のイメージだから」という球団の意向も働いたが、活躍していれば当時空き番号となっていた10番台もしくは20番台との交換になっていたはずだ。「そこは何とも思わなかったです」。結果で示すしかない。周囲の雑音の中、桜井は心を燃やし、2年目に向けて始動していた。

かつてのエースに学ぶ


 当時の首脳陣も期待の若手の1人として発奮を促していた。翌17年のキャンプ中には、2月18日の韓国/サムスンとのこの年、初の対外試合でオープニング投手を任されている。ところが・・・

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