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野球浪漫2021

阪神・板山祐太郎 未来を変えるのは自分 「とにかくバットを振る。打たなきゃ試合に出られない」

 

阪神の今季開幕時の外野のレギュラーは、盗塁王に黄金ルーキー、そして豪打の助っ人。この場所を奪うのは至難の業。だからこそ、少ないチャンスの中でいかに結果を残すか。その1点に集中させるため、試行錯誤を繰り返す。すべてはチームが日本一を目指すピースになるために。
文=中野雄太(デイリースポーツ) 写真=桜井ひとし、早浪章弘、BBM

結果を残しベンチでチームメートに迎えられる板山


まだまだ屈しない


 魂を揺さぶる一打だった。10月14日・巨人戦(東京ドーム)。両チーム無得点で迎えた9回二死一、二塁の場面で、代走から途中出場していた板山が打席に入った。この時点で打率は2割に満たない。ベンチでは糸井(糸井嘉男)、原口(原口文仁)、大山(大山悠輔)の代打陣が準備していたが、矢野(矢野燿大)監督は「あいつに任せたかった」と送り出した。18.44メートル先にはNPB最速166キロを誇る守護神・ビエイラ。簡単に2球で追い込まれたあと、甘く入って来たスライダーを「捨て身でというか気持ちで食らいついて」と執念で振り抜いた。

「越えてくれ」──

 打球は右翼手・松原(松原聖弥)の頭上を通過し、フェンス最上部に直撃。二塁ベースに達した背番号63は渾身のガッツポーズで感情を爆発させた。値千金の先制&決勝2点適時二塁打に仲間たちも沸きに沸く。「やっぱりファームに落ちて……苦しいときもありましたけど、あきらめたら終わりだと思って。支えてくれる人に恩返しできるようにと思って、毎日やっていたので。この大事なときにいいところで打てて良かったです」。奇跡の大逆転Vを目指す道中、不屈の男が光り輝いた日だった。

「ファームに落ちても少ないチャンスの中で結果を出すためにやっていたので、もちろんうれしかったですし、それ以上に周りの人が喜んでくれたというのが一番うれしかったです。チームメートはもちろんですけど、妻であったり。シーズンが終わったあと、フェニックス・リーグに試合をしに行ったときに、ファームで練習に付き合ってくれた裏方さんやトレーナーの人にも喜んでもらえたので。本当に僕も感謝していますし、本当にそれがうれしかったです」

 亜大から2016年にドラフト6位で阪神に入団。同じ大卒同期で5位入団の青柳晃洋が成長曲線を描く中、板山は「今年は、という強い覚悟を持って」と悲壮な覚悟でプロ6年目の今季を迎えた。オフは昨年に続いてメジャー・レッズの秋山翔吾に“弟子入り”して合同自主トレ。年明けに静岡県下田市で超一流の技術に触れ、学んだことを自身の体に浸透させた。「考え方とか去年だけでは聞けなかったこともあるので、そういうのをもっと聞いていきたいと思っていました」ソフトバンク・上林(上林誠知)やDeNA・細川(細川成也)らとも時間を共有し、切磋琢磨(せっさたくま)した。

「(打撃で)体の面をピッチャーになるべく見せずに、体を手が追い越していくというか。手が先に出ていって勝手に回るみたいな。僕は『右腰の開きが早い』と言われていたので、そういう意味で体の面を変えずに手を出していく。打撃フォームは秋山さんをまねしています。秋山さんみたいなバッターになりたいと思っていたので。僕はもともとスイングの軌道が上からたたくじゃないですけど、斬るような打撃が多かったんですよ。(球を)かめば強い打球がいっていたんですけど、どうしても確率が悪いという中で……。日本の左バッターで誰が一番ヒットを打っているかと見ていたら、秋山さんでした」

 2月の高知・安芸二軍キャンプでは、練習前に行う毎朝恒例の声出しで「虎の秋山さんになれるように頑張ります!」と高らかに宣言。「とにかくバットを振る。打たなきゃ試合に出られない」と一心不乱に打ち込んだ。そのとき、沖縄・宜野座一軍キャンプではドラフト1位・佐藤輝明(近大)が規格外のパワーで周囲を驚嘆させていた。「若い選手も増えて、なかなかチャンスはもらえない。明らかに目立った成績を残さないといけない。一球一球に魂を込めて1スイングも無駄にしない思いでやりました」。キャンプ打ち上げ時の手締めのあいさつでは「日本一の1ピースになれるように」と誓った。

 二軍戦8試合で34打数17安打、打率.500。「今年に限ってはいい感触がある。結果を残すしかない。それに尽きると思います」と手応え十分の状態で3月9日の広島とのオープン戦(甲子園)で一軍に合流し・・・

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