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野球浪漫2022

楽天・松井裕樹 自身を支える“年輪” 「抑えとして投げているのは、想像していなかった。そこが人生の面白いところ」

 

いまや球界屈指のクローザーだが、さまざまな経験が自身の糧となり、成長してきた。抑えて当たり前と思われがちなポジションで、重ねてきたセーブ数は節目の「200」に接近中。これからも変わらず、チームのために腕を振る。
文=田口元義(フリーライター) 写真=桜井ひとし、井沢雄一郎、BBM


まさか自分が……


 見慣れない光景。

 8月30日のオリックス戦(楽天生命パーク)は、まさにそんな幕切れだった。

 1点リードの9回に、楽天不動の守護神がマウンドに上がる。

 先頭の中川圭太を空振り三振に打ち取り、リズムを整える。ところが、そこから2者連続でフォアボールを許し、二死一、二塁から西村凌に逆転ツーベースを許した。

 松井裕樹は、敗戦投手となった。

 セーブシチュエーションでの救援失敗は今シーズン初めてだった。42試合で27セーブ、防御率1.76と安定感を誇る守護神は、どの成績より「セーブ失敗を限りなくゼロに近づける」ことを掲げている。

 メディアがこの痛恨を記事にする。負けたことが取り上げられるのは、それだけ松井裕がクローザーとして認められている証左でもある。

 それは宿命だ。本人もその話題になると、毎回苦笑いを見せながらも受け入れている。

「当たり前に抑えることを求められるポジションですからね。打たれて負けると、『普通じゃないことが起きた』って思ってもらえるってことですよね。自分の中では、『失敗しなければチームはもっと上の位置に行けるのに』とか、もったいないなって思いますけど、家に帰って、寝て起きたら『今日も試合あるし』って引きずらないようにしています」

 松井裕は「打たれた次の登板は、すごく気合いが入りますよね」と胸の内を話していた。それはすなわち、同じ失敗を繰り返さないことの決意表明であり、通算193セーブ(9月1日現在)を挙げ、楽天で絶対的な地位を確立できた背骨でもある。

 プロ9年目。足跡をたどると、ふと「まさか自分が……」と脳裏をよぎる瞬間がある。

「抑えとして投げているのは、もちろん想像していなかったですよね。楽天に入団したときは、先発ローテーションで投げるイメージがありましたし。そこが人生の面白いところですよね」

 松井裕はそう言って笑っていた。

 プロでのキャリアだけではない。松井裕は先発でこそ輝けるピッチャーだと・・・

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