野球に関して、投球に関して誰にも負けたくはない。だからこそ、自分自身とも真剣に向き合ってきた。これからも目の前の「敵」に真正面から勝負を挑み続けていく。 文=坂上俊次(中国放送アナウンサー) 写真=桜井ひとし、BBM 同期のデビューを刺激に
就寝前には、フレグランスキャンドルで1日の疲れを癒やすことがある。リラックスタイムには、形状自在の柔らかなソファーに長身を預ける。スラリと伸びる長い足に、柔らかな受け答え、まさに「おちゃめな好青年」である。
しかし、もう一面がある。自他ともに認める「負けず嫌い」だ。
「野球はもちろん、マリオカートで負けても悔しいです。あんまりゲームをするわけじゃないですけど、勝負事は負けると悔しいですね。おみくじで大吉が出なくても悔しいくらいですから」 等身大の飾らないコメントに、こちらも笑みがこぼれそうになるが、やはり、
遠藤淳志の根底にあるのは、「負けず嫌い」の魂である。
霞ケ浦高でも140キロ台中盤のストレートを武器に、ポテンシャルの高さを認められてきた。甲子園出場こそ叶わなかったが、その素材の高さはスカウトの注目も集める。
一方で、その「負けず嫌い」の心をコントロールすることを求められたこともあった。
「カッとなること、思うようにならずイライラして見えること、そこをチームの監督から言われました。表情に出し過ぎないよう、ポーカーフェースで投げるよう言われたこともありましたね」。
2018年、身長186センチの本格派は、ドラフト5位で
広島に入団した。細身の18歳は、プロで戦う土台づくりを急ピッチで進めた。
「体重72キロでしたから。ウエート・トレーニングもやり、食事の質も意識しました。食後にプロテインも摂るようにしました。その結果、84キロまで増えました」。
同時に、自分の持ち味も忘れなかった。長い手足を柔らかく扱うメカニクスである。
「柔軟は毎日やっています。体が硬くなると、持ち味が出ません。練習後も必ずストレッチをやります。むしろ、やらないと落ち着かないくらいです」。
ピッチングの面でも、さらなる段階が求められた。
「高校のときは、とにかく押すピッチングでした。まとまりはなかったですが、荒れた球で抑えていました。でも、プロでは同じようにはいきません。少しでも甘く入ると打たれてしまいます。厳しいコースを突けるようになることも大事です」。
1年目は、ウエスタン・リーグ公式戦の登板で4試合のみ。チーム方針としても、将来の土台づくりを優先したプランであった。
しかし、2年目の19年、遠藤の闘志に火をつけることがあった。5月30日の
ヤクルト戦(神宮)で同期入団の
山口翔がプロ初先発、7回無失点の好投で初勝利をマークしたのだ。2人は同年齢で同ポジション、プライベートでも行動をともにするほど仲が良い。
「うれしさもあり、悔しさもあります。あの初勝利を見て、自分も負けられないと思いました。自分も結果を出せるよう、強い気持ちで投げたいです。少しでも早く、山口と一緒に一軍で活躍したいです」 遠藤も歩みが止まっていたわけではない。むしろ、育成段階としては順調であった。
「まだまだ体は細いですが、少しずつ変わってきました。だいぶ球に重さが出るようになり、キレも増したように思います。これまでのストレートでは打者にはじき返されることが多かったですが、精度が上がったことで空振りやファウルを奪えるようになってきました」。
その潜在能力を見抜いていたのが・・・
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