一度はあきらめたプロの世界。失意に暮れていた“右腕”に光が差した“ひと言”から新たな挑戦が始まった。今や欠かせぬ戦力となった俊足巧打のスイッチヒッターには、心に宿す強い思いがある。 文=真柴健(日刊スポーツ) 写真=湯浅芳昭 転向の真意
「野手転向……どうや?」
思いもよらない言葉に、息をのんだ。あのころの
佐野皓大には、うなずくしか選択肢がなかった。
高校時代に最速152キロを計測した右腕も、入団3年目の2017年オフ、投手人生のマウンドを突如として降りることになった。
「正直なところ……。イップスでしたね……」 衝撃の告白だった。
「実は全然、投げられなくなったんです。もう、プロ生活は無理だろうなと感じてました。マウンドに立つと、どうしても投げられなかった。投げるときに、なぜか気持ち悪い感じがして……。これはダメだなと、自分でも分かっていたんです」 忘れもしない。17年5月21日のウエスタン・
広島戦(三原)だった。
「ブルペンの後ろにネットが一枚あったんですけど、1回、暴投してから……。まともに投げられなくなりました」。
球が上ずったり、意図せずワンバウンドしたり。ストライクを投じることができなくなっていた。
「あ、終わったなと。(投手としての)手応えが、ちょっとずつあったんですけど、急にイップスが来たという感じだったんです」 一度は野球人生をあきらめたという。
「気分転換で打撃練習をしてみたんです。そのとき、本当にいろんな人が心配してくれていた。ダッシュのタイムを計っているときも、だいたい一番でした」 思い悩む毎日の中で・・・
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