週刊ベースボールONLINE

野球浪漫2023

西武・大曲錬 打てるなら打ってみろ!「僕にとっては、今井が同じチームにいることが本当に大きいんです」

 

福岡大時代は準硬式でプレーしていた右腕も、プロ3年目を迎えた。過去2年はシーズン通して一軍戦力になれなかったが、今年は頼もしい同い年を刺激に本格開花が間近だ。自らが描く将来像に向かって、歩みを止めない。
文=上岡真里江 写真=桜井ひとし、BBM


今年、一番変わった投手


 思考が変われば、人生が変わっていく。

 今年の大曲錬が、その言葉の真意を大いに証明している。

 2021年に福岡大からドラフト5位で西武に入団。準硬式球から硬式球への適応はスムーズだったものの、即戦力として期待される大卒選手としては1年目4試合、2年目6試合の登板と、過去2シーズンは結果を残すことができなかった。3年目の今年も、どうすれば結果が出るのか、ファーム生活に終止符を打てるのか。そんな試行錯誤でスタートしてもおかしくはなかったが、大曲のたたずまいはまったく違っていた。

 昨年の秋季教育リーグでの好成績(2試合、2回0安打5奪三振0失点)もあり、春季キャンプはA班スタートとなると、ブルペン投球、紅白戦、対外試合と日々首脳陣からの評価を上げていき、オープン戦では4試合に登板し、4回2安打3奪三振0失点、1セーブと見事に結果を残した。その中で、早い段階から捕手の柘植世那は3年目右腕の変化を感じていた。

「今年、ボールを捕っていて一番、変わったと感じているのが大曲です。ボール自体はもともと質が高いので、そこまで大きな変化はないですが自信を持って投げている感じがものすごく伝わってくる。去年までは、『これで打たれたら、また二軍に落とされるんじゃないか』とか、そういう不安な感じが表情にも投球にも出ていた。でも、今年はそういう不安な様子は一切なくて、むしろ強気で打者に向かっていて、すごく良いんですよ」

 その後、何人もの投手仲間やコーチ陣などがまったく同じことを口にしている。 大曲本人に尋ねると、周囲が感じるその自信には、しっかりとした根拠があった。一番のきっかけは、豊田清投手コーチの一言だった。

「今年、豊田さんから『打てるものなら打ってみろ! ぐらいの気持ちでいけ』と言われて、確かに自分にはそれが足りなかったなあと思いました。大学時代はそこまで打たれずにいたので、気持ち的にも余裕を持って投げられていたのですが、プロに入ったらその余裕がなくなって、逆に一歩引いてしまって。1、2年目は『ここにこうやって投げなければいけない』『ここに投げ切れさえすれば大丈夫』とか、自分で自分にプレッシャーを掛けてしまっていたんです」

 だが、豊田投手コーチの言葉でそのことに気付き、考え方が一変したことで、どんな相手に対しても「打てるものなら打ってみろ!」と常に上から目線で勝負を挑めるようになった。

 とはいえ、昨年まで一軍で結果が出せていなかった以上、明確な改良点がない限り本気で心の底から「打ってみろ!」とは思えないものだ。その意味では、オフ期間での取り組みがあったからこそ、そこまでの自信が兼ね備わったと言っても過言ではない。

 自主トレでは、鴻江寿治氏が主催する『鴻江スポーツアカデミー』の合宿に参加した。きっかけは・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

野球浪漫

野球浪漫

苦悩しながらもプロ野球選手としてファンの期待に応え、ひたむきにプレーする選手に焦点を当てた読み物。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング