週刊ベースボールONLINE

野球浪漫2023

日本ハム・江越大賀 30歳での新天地 「正直『えっ!』って感じだったけど、寂しさもありながら、うれしい気持ちだった」

 

誰もが認める抜群の身体能力。だが、ポテンシャルをフルに発揮できぬまま、阪神での8年間は過ぎ去っていった。30歳を前に北の大地で再出発を切ることができるのは、チャンス。見る者が驚く打棒を手に入れたとき、ようやく眠れる才能が花開く。
文=杉浦多夢 写真=毛受亮介、川口洋邦


気づいたら8年


 屈指の人気球団で華々しくスタートしたプロ野球人生は、停滞しつつあった。いつしか「一軍の壁」が江越大賀の前にそびえ立つようになり、「特に成績も残せないまま、気づいたら8年も経っていた」と阪神時代を振り返る。だから今、新天地である北海道での日々は、充実感であふれている。節目の30歳で迎えたシーズン。苦労に苦労を重ねてきた男に、あらためて自らの力を証明する舞台が巡ってきた。

 最初の2年間は、ある意味で順調と言える歩みだった。駒大からドラフト3位で2015年に阪神へ入団すると、初スタメンで初本塁打を放つなど、1年目は56試合に出場して5本塁打。そして翌16年、4月3日のDeNA戦(横浜)で代打からシーズン第1号を放ち、同7日の巨人戦(東京ドーム)でもやはり代打で第2号。スタメンに名を連ねた翌8日の広島戦(甲子園)では第1打席でソロを放って3試合にまたがる3打席連続本塁打を記録した。さらに翌9日の同戦、またもソロを突き刺して4試合連続本塁打で甲子園の大観衆を揺るがせた。

「あのときの甲子園の歓声は忘れられない。歓声というか、本当に地鳴りのような。ほか(の球場)では絶対に感じることができないものでした。それを『もう一度』って思いながらも、うまくいかないまま時が過ぎていってしまった」

 2年目も72試合に出場して7本塁打と、「当たれば飛ぶ」ことは証明したものの、今に続く「確実性」という課題は克服できぬまま、打率は.209。期待の大砲候補として優先的に使われていた期間は終わりを告げ、オフにFAでオリックスから同じ外野手の糸井嘉男がチームに加わると、一気に出番は激減する。代走や守備固めが主な役回りとなり、数少ないチャンスでもがむしゃらさが空回りした。

 限られたチャンスの中で結果を残すのは難しい。だが、そこで結果を残した者しかレギュラーの座は手にできない。もちろん、必死にもがいた・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

野球浪漫

野球浪漫

苦悩しながらもプロ野球選手としてファンの期待に応え、ひたむきにプレーする選手に焦点を当てた読み物。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング