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野球浪漫2024

楽天・茂木栄五郎 現実を受け入れながら「一軍にいられないもどかしさはあったんですけど、助けられたことが多かったので踏ん張ることができた」

 

1年目から定位置をつかむなどキャリアは順調だった。しかし、完璧主義であるが故に満足することはなかった。近年はケガにも苦しみ、理想とは程遠い成績が続く。心の奥にはもどかしさも残るが、もう下は向かない。今と向き合い、向上心をたぎらせている。
文=田口元義(フリーライター) 写真=桜井ひとし、兼村竜介、BBM


血をたぎらせるもの


 茂木栄五郎は大きく息を吸い、「いやぁ」と言葉を吐いた。

「早いですねぇ。『もう30か』って。自分がプロになってから想像してこなかった年齢ですからね」

 楽天に入団して9年目の今年。茂木は2月で30歳になった。

 見た目はルーキーのときとさほど変わらないように映るが、プレーヤーとしての年輪は違う。鮮やかな曲線を描いているかと思えば、邪魔するように急に湾曲する。そのゆがみに抗い、真円を描こうとする。

 そうして、茂木の年輪は味を出す。

 メインとするポジションは、学生時代から慣れ親しむ三塁ではなく、プロで研さんを積んできた遊撃でも、オプションとして鍛錬する二塁でもなく、一塁である。

「一応、どこでもできるように準備はしています」

 そうは言うものの、繊細な生き物であるアスリートは、変化が成績に直結してしまうことが少なくない。主力として14試合に出場したオープン戦では、打率.189と振るわなかった。不慣れなポジションと決して無関係ではないはずだ。

 それでも茂木は、前を向く。

「オープン戦とかでは結構、苦しんだんですけど、今年はチャンスをもらえているので。しっかり結果を出せるように、開幕から頑張っていきたいなとは思っています」

 茂木は今、30歳にして原点を取り戻そうとしている。

 負けたくない。

 学生時代から強く抱く向上心を、体現しようとしているのである。

 桐蔭学園高時代は・・・

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