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野球浪漫2025

広島・大盛穂 競争の最前線で「自分にしかできないことをする。そのスキルを上げられるように練習している」

 

華麗な攻守走でチームを救い、ファンを沸かせる。今年6月上旬までは、代走や守備固めを主に担った。しかし、そこから自己最多32試合でのスタメン出場。来季へ向けてさらなる競争が予想されるチームで、その急先鋒に立つのが育成出身、入団7年目の29歳だ。
文=相原礼以奈 写真=川口洋邦、井沢雄一郎、井田新輔、桜井ひとし、宮原和也、BBM


攻守走で見せた存在感


 きっかけをつかむ一打は、突然飛び出した。

 雨中で繰り広げられた6月8日の西武との交流戦(マツダ広島)。6回裏に代走で途中出場し、7回表から中堅の守備に就いた大盛穂は、8回裏の先頭打者として打席に立つ。この日、チームは打線が爆発し、7回終了時点で9対0の大量リードに成功していた。

「プレッシャーはあまりなく、自分のスタイルでどうアプローチしていくか、それだけを考えて」。相手の四番手・田村伊知郎の3球目のストレートにノーステップでタイミングを合わせ、赤いビニールポンチョ姿のファンが目立つ右翼席まで運んだ。打った本人も直後に「びっくりした」と語った、今季1号本塁打。2023年8月10日のヤクルト戦(神宮)以来となる2年ぶりの一発だった。

 代走・守備固め要員として常に備え、この日時点で今季のスタメン出場はゼロ。「ホームランバッターではないですけど、ああいうところで1本を出すのは僕のような立場からしたらすごく大事なこと。負けていようが勝っていようが、ああいう打席があったことはとてもプラスだったと思います」

 チーム内での役割が急激に変わることはないが、そこから大盛の起用に変化が表れ始めたのは事実だ。6月12日のロッテとの交流戦(ZOZOマリン)は、七番・中堅で今季初スタメン出場。起用に応えるようにバットもさえ渡り、1号本塁打の8日から、出場10試合連続安打を続け、交流戦期間中に計3本塁打と、従来の“切り札”的存在からの脱却を印象付けた。

 もちろん、強みの守備・走塁でも無二の存在感を見せ続ける。5月16日の阪神との首位攻防戦(甲子園)では、2対2と追い付かれて迎えた9回に代走で出場。相手が前進守備を敷く中、モンテロの中前打で二塁から一気に生還して決勝点をもぎ取った。中継プレーに生じたわずかな乱れを突いてトップスピードで三塁を回り、鮮やかなヘッドスライディング。三塁コーチャーの赤松真人一軍外野守備・走塁コーチの手が回るのを見て、思い切って飛び込んだことが功を奏した。

 6月29日の中日戦(バンテリン)は代打で出場後、2対0の8回から中堅の守備に。一死二、三塁の場面で岡林勇希の左中間への打球をダイビングキャッチ。抜ければ同点という痛烈な当たりに飛び付いて、犠飛で1点は与えたものの、ルーキー・佐藤柳之介の初勝利の権利を守り切った。「『ここで捕れば勝てる』って思いながら飛び込みました。中継ぎ陣も苦しい試合だったと思うので、何とか助けてあげることができて良かったと思います」

 この日に限らず、中堅手として再三の好捕でチームを救っている。「守備固めで行く機会が多いので、ベンチでも観察しています。自チームのピッチャーの特徴や相手バッターの特徴を考えた上で、『多分、こっち来るやろうな』と」。観察、そして考察。自分の感じるものを信じて、それが想像どおりにはまった結果が、見る者の度肝を抜く好プレーにもつながっている。

「一軍の選手っていいバッターが多いので、ベンチや映像で見ていても、『やっぱこっちに打ちたいんだろうな』とか、左バッターなら『ライトの引っ張りにかかってるんだな』とか、いろいろな要素を考える。アウトやストライクのカウントによっても『こっちかな』と、一球一球考えながら」

 中堅のポジションは・・・

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