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ソフトバンク・大江竜聖 新たな左のスペシャリストへ「(トレードは)すごく前向きな気持ちでした。必要とされている。心機一転頑張ろうと」

 

プロ4年目の2020年にサイドスローに転向して、43試合に登板し、防御率3.11でブレーク。翌年も47試合に投げ“左キラー”として存在感を示す。25年5月に巨人からソフトバンクへ電撃移籍し、16試合で防御率1.53。勝負の10年目、役割を全うする。
文=田尻耕太郎(スポーツライター) 写真=湯浅芳昭、戸加里真司、BBM

ソフトバンク・大江竜聖[投手]


縁のない土地へ


 マウンドでは火消し役だが、プライベートになると火を起こして大事に育てたりする時間を楽しむ。大江竜聖の趣味はキャンプ。野球の練習ではなく、もちろんアウトドアのほうだ。

「もともと興味があって、試しに3年ほど前に一回行ってみたらハマっちゃいました。まあ、最初から張り切ってキャンプ道具を一式そろえたのもあるんですけどね(笑)」

 日本シリーズが終わると早速、福岡市の近郊に妻と愛犬を伴ってデイキャンプに出掛けたという。

「福岡はすぐ近くにキャンプ場もあって便利ですよね。去年までは東京から山梨や千葉の館山まで出掛けていました。2025年の正月も富士山の近くでテントを張って25年を迎えましたからね」

 初日の出を拝んでいたころは巨人の一員だった。まさかソフトバンクのユニフォームを着て今シーズンを戦い終えるなど、もちろん想像もしていなかった。

 昨年5月12日、ソフトバンクと巨人で1対2の交換トレードが行われた。ソフトバンクからはリチャードが巨人へ。そして巨人にいた大江は、秋広優人とともにソフトバンクへ移籍することになった。のちに秋広は「少し前からチームの中にトレードのウワサがあって、自分が対象ではないかと薄々感じていた」と話したが、逆に大江はまったく寝耳に水の出来事だったという。

「僕はそのころ二軍にいました。前日は埼玉の本庄市でのイースタン・リーグの遠征試合に帯同していて、その試合後に球団の方から『明日、球団事務所に行ってほしい』と伝えられました。内容が明かされませんでしたが、その時点でトレードだろうなと思いました。チームメートとの別れは寂しかったですけど、自分の中ではすごく前向きな気持ちでした。必要とされている。心機一転頑張ろうと。ただ、翌日に球団事務所で移籍先がホークスだと聞いたときはびっくりしました。九州はキャンプや試合で行くことはあっても、基本的に縁のない土地だったので」

 大江は神奈川県座間市の出身。3人きょうだいの末っ子で生まれた。名前の「竜」は姉が付け、「聖」は父が大ファンの歌手・松田聖子からとった。幼稚園のころには同じ左利きの父に投げ方を教わり、兄が野球をやっていたことから6歳で少年野球チームの「東春ラビット」に入り、小学校3年生からは父が監督を務めた「イーグルス座間」に所属した。

「子供のときは、自宅の前で太いチューブを腰に巻いて、父親が引っ張る中で走っていました」

 グラウンドを離れても親子練習は日課だった。そのころには離婚により男手一つで3人の子どもを育てていたのだが、試合の日などは手作り弁当も用意し、小学校卒業後も欠かさず応援に駆けつけてくれていたという。

順調な野球人生


 中学では「横浜ヤング侍」で全国大会に出場。そして東京の二松学舎大付高に進学した。「寮のある学校に行きたいと思った」というのは、父の家事の負担を減らしたいという思いからだったのだろうか。

 同校はここ最近こそ甲子園常連のイメージも強いが、大江が入学した時点ではセンバツ出場は4度経験していたものの、夏はそれまでに東東京大会で10度も決勝まで駒を進めながら、あと1勝の壁を一度も突破できずにいたのだが、大江がその負の歴史にピリオドを打ったのだ。入学してまもなくベンチ入り。1年生夏から東東京大会のマウンドに上がった。

 チームは順調に勝ち進み、果たして迎えた帝京高との決勝戦。大江は1年生にして同校がこれまで開けなかった扉の向こう側へとチームを導く快投を見せた。ビハインドの6回途中から二番手で登板すると、直後に同点に追いつく。その後も試合は動いたが、延長戦までもつれ込んだ。誰もが緊張感ピークの中で1年生の大江は淡々と投げ続けた。味方が延長10回に勝ち越しに成功。大江はその裏を打者3人で仕留め、4回2/3を1失点の大仕事で夏の甲子園初出場のキップを手繰り寄せたのだった。その年の甲子園では2試合、計8イニングのリリーフ登板をした。

 秋から主戦となると、秋季東京大会では・・・

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