現役ドラフト史上初の2巡目指名で加入の昨季、リリーフ陣の一角で無二の存在感を放った。アンダースロー、テンポの良さ、そして緩急。道を切り開いてきた持ち味で躍動する右腕は、しなやかに力強く、今季もチームを支えていく。 文=坂上俊次(中国放送アナウンサー) 写真=横山健太、井沢雄一郎、宮原和也、BBM 一貫した持ち味
このところ、少しゆっくり歩くよう心掛けている。テーブルに置いたスマートフォンを手にするときも、ゆっくりと手を伸ばすようにしている。少し気を抜くと、やはり、せわしなく行動してしまう。
いわゆる「せっかち」なのだ。
「ラーメンを作るとき、お湯の沸騰が待てないこともありました。『フタをして3分』が待てず、2分で食べ始めたことだってあります」 コーヒーを自分で淹(い)れるようになったが、時間をかけてお湯を注ぐことができない。最近は、キッチンタイマーを用意し、推奨された時間を守るように心掛けている。
プロ野球の世界に飛び込んで7年目、テンポの良さは、鈴木健矢の武器になっている。ブルペンでも独特のリズムが、存在感を放つ。
捕手からボールを受け取ると、
「スライダーいきます」と次の球種を快活に告げる。すると、アンダーハンドから伸びのある球がリリースされる。周囲の投手と異なるリズムが、鈴木の独特の存在感を雄弁に物語る。よく見ると、投球間にロジンバッグを触ったり、ボールを入念にこねたりすることもない。
「自分は、指にロジンをあまり付けなくていいタイプなんです」 天賦のメトロノームは、小刻みにリズムを刻んでいく。私生活では「ゆっくり」を心掛け始めた28歳だが、マウンドでは、そのテンポの良さで打者を幻惑する。
広島に移籍して1年目の昨シーズン、自己最多タイの24試合に登板し、2勝0敗、防御率1.89。
ロングリリーフを中心に活躍した。球界でもレアなアンダースローからのストレートは、130キロ前後でも打者を差し込むキレがある。そして、独特の「間合い」だ。テンポの速いピッチングは、相手に考える隙を与えない。
少年時代はオーバースローの本格派だった。プロ入り当初は、サイドハンドから147キロの速球も投げ込んでいた。そして、アンダーハンド。投球スタイルを変えながら、鈴木は野球人生を切り開いてきた。
一方で、一貫して変わらないものもある。投球のテンポの良さだ。そこには、彼の野球人生が凝縮されている。
「高校時代も社会人でも、あまりコントロールが良くありませんでした。それなのに間(ま)が長い投球をしていれば、野手も守りづらいだろうと思いました。もちろん、時にバリエーションも加えますが、基本的にはテンポ良く投げたいです。打者に考える暇を与えないようにしたいと考えています」 二つの出会いと転機
少年時代の鈴木は、オーバーハンドから速い球を投げ下ろしていた。それが、サイドスローに転向し、今や球界でも数少ないアンダースローだ。その転身には、人生の節目での出会いがあった。
彼が中学2年の春・・・
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