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楽天・美馬学インタビュー 壁を越えた先に

 

スタートダッシュに成功したチームの、立役者の一人であることは間違いない。急きょ回ってきた開幕投手という大役にも動じることはなかった。パワーよりもテクニック。クールな表情で強打者たちを手玉に取るピッチングは痛快だ。自身の前に立ちふさがる壁を乗り越えるべく、長いシーズンを戦っていく。
取材・構成=富田庸、写真=高原由佳、BBM


アクシデントで開幕投手に


──今季は開幕投手という大役を任されました。プロ7年目のスタート、気持ちも違ったのではないですか。

美馬 うーん、何だろう、そこまで意識することはなかったですね。本来ならば岸(岸孝之)さんが立つべき場所であったわけですし、僕はあくまで代役。開幕投手という意識は持たずに投げました。

──岸選手がインフルエンザB型と診断されたのが3月26日でした。梨田昌孝監督から開幕投手を告げられたのはいつでしたか。

美馬 27日の練習前でしたかね。監督室に呼ばれて「あまり気負うことなく思い切りやってくれ」と言われました。僕は正直、そこまで背負って投げるタイプではないので、そこで「よっしゃ、やってやるぞ!」というよりは、「(自分の)開幕が1日早まったな」くらいの感覚でした。

──当初は開幕3戦目に登板するはずだったかと思います。しかし、2戦目予定の安樂智大選手が23日に右大腿二頭筋部分損傷で開幕アウト。この時点で登板が1日繰り上がりました。そして3日後、さらに……。

美馬 そうですね。でも、僕よりも周りのほうがザワザワしている感じで(苦笑)。オープン戦では19日、25日に投げていますから、結果的に中5日、中5日という間隔になりました。実際、調整が遅れていたので、疲れはあまりなかったんです。春季キャンプ開始早々の2月2日に股関節周辺を痛めてしまって。なかなか実戦登板に入れず、投げても内容があまり良くなかった。本当にギリギリ間に合った感じで……。しっかり投げられると実感できたのは開幕戦。ぶっつけ本番でした。

──波乱含みのスタートですね。その開幕戦は3月31日、京セラドームでのオリックス戦でした。

美馬 試合前にセレモニーとかがあったので「あ、今日が開幕なんだな」と。で、マウンドに立ったときに久しぶりにいい感覚を思い出して、緊張感を持ちながらも楽しく投げられたかなと思います。そして、終わってから「すごいところで投げたな」という実感を持ちました。

──投球内容は6回を投げて6安打3失点で、勝利投手の権利を持って降板。その後、同点に追いつかれて勝ち星を手にすることはできませんでしたが、チームは延長戦の末に競り勝ちました。

美馬 一人ひとり、丁寧にしっかり抑えることができましたね。点を取られた5回は球速、コースもまとまってしまい、そこで一度落ち着いて投げることができればよかったんですけど……。4点を取ってくれた打線に感謝です。ピンチの場面で投げ急がず、落ち着いて投げることが課題として残りました。

──8日のロッテ戦[ZOZOマリン]では6回途中2失点で今季初勝利。そして今季初の本拠地登板となった15日の日本ハム戦[Koboパーク宮城]では7回途中1失点で2勝目。ただし、「調子は良くなかった」という言葉が印象的でした。

4月15日の日本ハム戦で2勝目を挙げ、Koboパーク宮城に集まったファンとハイタッチ。その表情から充実ぶりが感じられる


美馬 真っすぐやシュートが抜けてしまうことが多く、思ったところには投げられませんでした。1、2戦目にはそこを抑えて投げることができたんですけど、それができなくて。球の力もなかったと思います。でもその分、ほかの球を丁寧に投げられたかなとは思います。

──昨年の投球内容を見てもストレートの割合が比較的低く(31%)、カーブ、カットボール、スライダー、シュート、フォークと、多彩な変化球をまんべんなく投げている印象があります。美馬選手の持ち味といえばそのあたりでしょうか。

美馬 はい、その中でも今年はカーブが一番カギになる球だと思っています。今はカウント球にもなっているし、勝負球にもなっています。持ち球の中で一番遅いのがこのカーブ。僕の場合、球速帯が固まってしまいがちですが、カーブがあることで・・・

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