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MLBスカウトコラム

スカウトから見ればクオリティースタートは1つの判断指標に過ぎない

 


写真=AP
 開幕から16試合連続QSを達成している田中将大投手が、メジャー新記録(これまでのメジャー記録は1973年のスティーブ・ロジャース投手(エクスポズ)。)の17試合連続クオリティースタート(QS、6回以上3自責以下)をかけて、3日(日本時間4日)、ツインズ戦のマウンドに上がりました。

 対戦相手のツインズとは6月1日以来、2度目の対戦。前回は8回を失策絡みの1失点に抑えて8勝目を挙げており、41年ぶりとなる快挙の達成にも期待がかかった試合。

 ただ、今日の田中投手は前半3回までの投球を見ていると、フォーシームも少なく、変化球のキレも悪かった。3回で5安打の結果からも状態の悪さが分かります。メジャー移籍をした今シーズン8安打を許した試合が2試合ありましたが、前半3回を見ていたら8安打を上回るのではないかと思わせるような投球内容。本人も調子の悪さを分かっていたのか、投球後に首をかしげる場面が見られました。

 本人も試合後「投げるボール全部にキレがなかったですし、中途半端なボールが多かった」と語っていたように、投球が冴えなかった要因として、良い頃と比べて腕が触れていないことを挙げておきたいです。全体的に力が抜けていたような投球フォームに見えました。

 これは、決してNPBの頃のような“ギアチェンジ前”の投球フォームではありません。上位から下位までパワーのある打者が揃うMLBでは、田中投手と言えど、全力に近い投球に終始せざるを得ないのが現実。今日はそれが出来ていませんでした。

 序盤を見て直ぐにコンディションが良くないと分かりましたが、これは中4日での疲労が出ているのかもしれません。オールスター前の連戦続きの影響もあるでしょう。

 開幕当初は、登板2日後にブルペンに入り50球ほど投げてていましたが、ここ最近は疲労を考慮して、20球から25球に抑えていると聞きます。NPBの頃は1週間1回の間隔で登板すれば良かったのが、MLBでは中4〜5日での登板が続く。開幕から4カ月たって少し疲れが出てきているのだと思います。ただし、これはMLBに足を踏み入れた投手であれば誰もが通る道。田中投手もMLBでは1年目。今は疲労を上手く抜く調整方法を模索している最中でしょう。

 今日は9安打4失点(4自責)と苦しんだものの、7回を投げ、12勝目を挙げたのは立派。打線も援護してくれたし、やっぱり持ってる男です。残念ながら17試合連続クオリティースタートは達成できませんでしたが、これは特に気にしなくてもよいです。

 最近、田中投手のニュースが出る度にクオリティースタートの話題が出ますが、スカウトの立場からすると、クオリティースタートは投手の善し悪しを判断する1つの指標に過ぎません。それよりも1年間トータルで、投球回数であれば200回、球数なら3000球が、投手を評価する際の重要な指標となります。

 それにしてもヤンキースの投手陣は田中投手の頑張りが目立つ。ヤンキースは本当に良い補強をしたと思います。
現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウトによる連載コラム。スカウトならでは視点で日米の選手をジャッジするほかMLBについても語る。

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