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イチロー選手、青木選手の所属先は?

 

ヤンキースからフリーエージェントとなったイチロー選手(写真=Getty Images)



 多くの日本のメジャーリーグファンにとっては、イチロー選手と青木選手の所属先がまだ決まらない事で心配されているのではないでしょうか?

 今回のコラムはイチロー選手、青木選手についてお伝えしたいと思います。イチロー選手、青木選手に興味を示していたシンシナティ・レッズとボルティモア・オリオールズに動きが出てきましたが、日本が誇る安打製造機2人が、さらに厳しい状況に追い込まれることになりました。

 まずはシンシナティ・レッズがレフトを守れる外野手を補強ポイントとしておりましたが、早速フィラデルフィア・フィリーズからマーロン・バード外野手と契約をしました。

 また、ボルティモア・オリオールズもレフトの左打ちの外野手を補強をポイントとしておりましたが、こちらもコルビー・ラスムスに急接近し、1週間以内に合意に達する可能性が浮上していると報道されております。

マーロン・ロバートの獲得で外野陣3人が確定


 マーロン・バード選手の年齢は37歳の右打ちの外野手ですが、昨年のシーズンは打率.264/本塁打25/打点85/出塁率.312/長打率.445という数字を残していました。

 バードの残る契約は2015年が800万ドルで、2016年は2015年に550打席に到達した時に800万ドルの契約が有効になり、打席数が満たない場合はチームオプションになるというリーズナブルな内容ですが、フィリーズが再建モードに移行したこともあり、トレード候補となっていました。

 ただ一つの心配としては、バードはレフトの守備は2010年以降で13イニングしか守っていないことですが、センターを守ることができる上に、2014年のパフォーマンスも良いため、アジャストすると思いますのでレッズにとっては大きなプラスとなるのではないでしょうか。

 外野手を補強ポイントとしているチームのうち、シンシナティ・レッズは唯一レギュラーの外野手を探していましたが、ジェイ・ブルーズ、ビリー・ハミルトン、マーロン・バードと3人のレギュラーが揃いました。

 これでレッズのニーズも控えのバックアップ要員となったので、イチロー選手と青木選手もともに故障者がでない限り、レッズでレギュラーとして迎えられることは、ほぼなくなったのではないでしょうか。

オリオールズの補強も2人に影響か


 ネルソン・クルーズとニック・マーケイキスをFAで失ったため、外野手を補強したい状況のボルティモア・オリオールズですが、外野を守れるデルモン・ヤングと再契約したものの、守備力には難があり、あくまでも指名打者としての起用がメインで、万が一のための外野控えという位置づけものでした。オリオールズはセンターにアダム・ジョーンズが固定され、ライトには現時点では2014年にブレイクしたスティーブ・ピアースもしくはデビッド・ラフが起用されるとみております。

 さらにアレハンドロ・デアザや若い有望株の選手が外野には控えているのですが、左打ちの外野手をもう一人加えることに意欲的で、オリオールズはトレードとFAで獲得を目指していました。

 そして、ここにきてバック・ショーウォルター監督が、数日中(2015年1月1日現在)にコルビー・ラスムスの自宅に訪れて、面談の機会をもつと報道もされております。

 バック・ショーウォルター監督はクラブハウスの調和を重視していて、過去に問題があったとされる選手を獲得する場合には、面接を行って人間性をチェックし、チームにフィットするかどうかを判断をしているのです。

 実際に昨年、ネルソン・クルーズとデルモン・ヤングの2人が同じようなプロセスの末に、契約に至っています。コルビー・ラスムスは、ドラフト1巡目指名されたその能力を十分に発揮できていないと考えられていると同時に、クラブハウスでの態度も素晴らしくはないとされているため、契約交渉を本格化する前に、面談を行うようです。

 コルビー・ラスムスはキャリアの中で3回20本塁打を記録するなど長打力があるのですが、2014年は打率.225/本塁打18/打点40/出塁率.287/長打率.448と期待外れに終わりました。

 コルビー・ラスムスの契約は、大体1年500万ドルから800万ドル程度ではないでしょうか。これはオリオールズにとってもリーズナブルな契約だと思います。またコルビー・ラスムスにとっても、1年800万ドルで契約し、本塁打王を獲得することで4年5700万ドルを手にしたネルソン・クルーズのケースと同様に、自分の価値を高めるチャンスを手にすることができます。

 このような状況のため、ショーウォルター監督のゴーサインが出れば、面談後まもなく合意できると見られていて、現時点ではイチロー選手と、青木選手にとってはとても不利な状況になっていると思います。

 ボルティモア・オリオールズは、青木選手とイチロー選手よりもコルビー・ラスムスの方に強く関心を持っていましたし、基本的に1年契約での補強をのぞんでいるため、関心を持っている青木選手とイチロー選手の2人のうち、単年ですむイチローにより興味を示していました。コルビー・ラスムスの話がこのまま進んだ場合には、青木とイチローはオリオールズの補強リストから外れる確率が高いと思います。

控え外野手を必要とするチームが契約する可能性は


 外野手を補強ポイントとしてきたチームのうち、マリナーズはセス・スミスを獲得したことで、完全に可能性が消えました。そしてバックアップの外野手を必要としていたカブスも、クリス・デノーフィアと合意したことで、可能性が低くなりました。残っているのはレフトを探しているジャイアンツくらいですが、ブライアン・セイビアンGMは「残っているFAの外野手には好印象を抱いていないため、トレードで補強を模索している」と地元メディアが報じていて、現状では厳しいものがあります。

 さらにパドレスは外野手の整理がセス・スミスのトレードで一区切りとなりましたが、まだメジャーレベルの選手を抱えていますし、シェーン・ビクトリーノ、アレン・クレイグ、ジャッキー・ブラッドリー・ジュニアを抱えるレッドソックス、カール・クロフォードとアンドレ・イーシアを抱えるドジャースの2球団は、まだ外野手が多くいるのも現状です。

 仮にジャイアンツがトレードで補強した場合には、青木選手は外野手4番手以降としての契約になることが濃厚で、イチロー選手はスプリングトレーニングに招待選手として参加できるマイナー契約、もしくはスプリングトレーニング中に外野の故障者が出た場合に契約をする確率が高まります。イチロー選手はメジャーリーグ3000本安打の記録もかかっているシーズンですので、とても大事なシーズンになる事は間違いないです。

 ただ、最悪の場合、2選手は日本に戻るという選択肢しか残されない可能性が現実味をおびてきました。私も2人の契約に注目しております。

著者PROFILE
1950年代生まれ。現役を引退後、MLBスカウトに転身。全米だけではなく日本球界にも太いパイプを築き、スカウティング活動に余念がない。
現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウトによる連載コラム。スカウトならでは視点で日米の選手をジャッジするほかMLBについても語る。

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