2013年、2014年の2年間4番を務めた
アンドリュー・ジョーンズとの契約延長をしなかった楽天が、今季の主砲としてピッツバーグ・パイレーツからFAとなっていた
ギャビー・サンチェス(Gaby Sanchez)内野手と1年2億5000万円+出来高で契約をしました。
今回はこのギャビー・サンチェスについてお伝えしたいと思います。ギャビー・サンチェス選手は31歳の右投げ右打ちの内野手で、ポジションはファーストで、サードとライトを守った経験はあるものの、いずれも数試合のみですので、日本に移籍後は一塁もしくは指名打者としての起用となるのではないでしょうか。
低めのボールの「見極め」が課題
ギャビー・サンチェス選手は2005年ドラフトでフロリダ・マーリンズ(現マイアミ・マーリンズ)に4巡目、全体126番目で指名されてプロ入りしています。
その後、2008年の9月にメジャーデビューを果たし、2012年にパイレーツにトレードで移籍しています。どのようなバッターか解説をしたいと思います。
2010年には151試合に出場し、打率.273/本塁打19/打点85/出塁率.341/長打率.448の成績を残し、ナ・リーグ新人王投票で6位となりました。2011年はオールスター前の前半戦で打率.293/本塁打13/打点50/出塁率.374/長打率.472と活躍し、オールスターにも出場しています。その2011年は後半に失速したため、最終的には打率.266/本塁打19/打点78/出塁率.352/長打率.427の成績となりました。
2012年以降は、メジャーではなかなか結果が残せなかったものの、3Aでは119試合で打率.293/本塁打21/打点74/出塁率.390/長打率.479/OPS.869とマイナーでは成績を出していた選手でした。
メジャー通算では打率.254/本塁打61/打点266/出塁率.332/長打率.413/OPS.744と、打率は高くありませんが、出塁率と打率の差は7分8厘、3A通算でも9分7厘と大きく、また四球を選ぶ事が出来るという特徴があります。
四球を選ぶ頻度は、3Aで8.2打席に1回、MLBで10.1打席に1回となっていて、2014年のパ・リーグでは
西武の
秋山翔吾選手(8.0打席)、
オリックスの
糸井嘉男選手(8.4打席)、
ソフトバンクの
柳田悠岐選手(8.5打席)、などが近い割合となっています。
一方で三振は3Aで7.7打席に1個、MLBで6.2打席に1個という割合で、楽天の
松井稼頭央選手(6.3打席)、西武の
栗山巧選手、ソフトバンクの
李大浩選手、日ハムの
中田翔選手(6.8打席)、などが近い数字で、西武の
中村剛也選手(3.8打席)、元楽天アンドリュー・ジョーンズ(4.2打席)、などよりはるかに少ない割合です。
ギャビー・サンチェスは、どちらかと言えばパワーヒッタータイプ寄りの打者ですが、選球眼と打席での「ねばり」を兼ね備えたタイプで、スイングが大きすぎたり、コンタクトする技術に問題があることが原因での三振が、極端に多いタイプではなく、より安定した打撃が期待できそうです。
日本流に言うと中距離打者となるのではないでしょうか。また、守備に関しては、2013年と2014年はやや数字が低下していますが、キャリア全体の守備の指標では、良い数字が残っていて、守備に大きな不安はなさそうです。
マギーに似たタイプのプルヒッター
彼は高めのボールを得意としております。また、真ん中低めのボールには対応出来ますが、両サイドの低め球が弱いというのが特徴です。
私の見た印象ですが、ファーストボール(ストレート)には強いようですが、チェンジアップ、スライダー(変化球)などをやや苦手としているという印象です。打球の方向性としては長打はレフト方向が多いですが、逆方向には打てないということではなく、数は多くありませんがライト方向でもスタンドインさせています。
安打に関しては、センターからレフト方向が多いですが、ライト方向にもしっかりと打てているというデータが残っています。日本の投手は特に低めのコントロールが良いので、まずはオープン戦で低めのボールの「見極め」が課題となるのではないでしょうか。
彼のホームランをコメリカパークで見た事があり、その時の印象がとても強いです。このコメリカパークはレフトが105.2メートル、センターが128.0メートルと外野がメジャーで最も広い球場の1つで、本塁打が中々でない球場です。
そのコメリカパークで軽々とレフトスタンドに運ぶパワーを見た時にとても驚きました。ギャビー・サンチェスを一言で例えると、元楽天のアンドリュー・ジョーンズというよりも、元楽天の
ケーシー・マギーにより近いタイプだといえます。マギーも逆方向に大きな打球を打てる選手でした。そのケーシー・マギーは2010年以降メジャーであまり良い成績ではありませんでしたが、2013年に楽天で見事に復活しました。このギャビー・サンチェスもマギー同様な成績を残せるか今年の打撃に注目をしたいと思います。
著者PROFILE 1950年代生まれ。現役を引退後、MLBスカウトに転身。全米だけではなく日本球界にも太いパイプを築き、スカウティング活動に余念がない。