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ソフトバンク連続日本一へ万全な先発補強

 

今年から指揮を執る工藤監督。豊富な先発陣をどのようなに起用するのか手腕に注目だ。



獲得を巡ってソフトバンクと巨人が争奪戦を展開


 2015年の先発投手の補強としてソフトバンク読売ジャイアンツなど複数球団が争奪戦を制し、最終的にはソフトバンクが2年契約で獲得したのが、リック・バンデンハーク投手です。

 今回は、このバンデンハーク投手についてお伝えしたいと思います。リック・バンデンハーク投手は右投げ右打ちの、身長195センチの長身投手です。オランダ出身で、2002年アマチュア・フリーエージェントでフロリダ・マーリンズと契約し、2007年にメジャーデビューを果たしています。メジャーではマーリンズ、オリオールズ、パイレーツの3球団でプレーし、2014年は韓国サムスン・ライオンズでプレーしていました。

右肘の柔らかさが良い


 通算成績では2Aで、19試合109.0回で防御率3.88/5勝5敗/奪三振116/WHIP1.20、3Aでは84試合485.2回で防御率3.74/40勝26敗/奪三振401/WHIP1.19、MLBでは50試合183.2回で防御率6.08/8勝11敗/奪三振179/WHIP1.63という成績になっています。

 MLBでは通用しなかったものの、3Aでは十分な成績を残していて、特に2012年は3Aで21試合123.1回で防御率2.92/13勝5敗/奪三振113/WHIP1.19と素晴らしい成績を残しています。しかし、その年もメジャーでは4試合2.2回で防御率13.50/WHIP2.25と通用しませんでした。

 その翌年の2013年に韓国に渡っています。韓国プロ野球移籍後は、49試合296.1回/防御率3.55/20勝13敗/奪三振317/WHIP1.16で、2014年だけでは25試合152.2回/防御率3.18/13勝4敗/奪三振180/WHIP1.11となっていて、2年目に成績を向上させています。

 メジャーではリリーフの経験がありますが、キャリアの大半は先発となっていますので、ソフトバンクでも基本は先発ローテーション投手となるのではないでしょうか。

 彼の目立つ成績は奪三振率の高さで韓国では9.63、2Aで9.58、3Aで7.43、MLBでも8.77と高い数字を残しています。そして与死球に関してはメジャーでは通用しなかったので、9イニングあたりで4.7個ですが、3Aでは2.78個、韓国でも2.82個となっています。

 リック・バンデンハークと近い投球フォームは、阪神メッセンジャー投手に近いのではないでしょうか。私が彼の投球フォームで気に入っている点は非常に右肘の柔らかい投げ方をしている点です。身長が高い選手はパワーピッチャーが多いのですが、長身の体を上手くつかいバランスよく右肘に伝わっている感じがとても良いです。

フォーシームで三振を奪える球威が武器に


 バンデンハーク投手の球種はフォーシーム、シンカー(2シーム)、チェンジアップ、スライダー、カーブとなっています。カッターはデータ上残っていますが、ほとんど投げていませんので、持ち球とはならないと思います。

 球速に関しては、2012年時のデータによると、フォーシームは最速が97マイル(156キロ)、平均で95マイル(153キロ)。して、スライダーが平均で83.6マイル(134.5キロ)、カーブが72.4マイル(116.5キロ)を記録しています。

 投球の割合としてはフォーシームが投球の66.3%、スライダーが18.5%とこの2つの球種が8割強を占めています。そこにチェンジアップとカーブを織り交ぜていくのが基本で、少ない割合でシンカーを投げていました。高い奪三振率を記録しているリック・バンデンハーク投手ですが、その三振を奪う上でも、投球の頻度の高いフォーシームとスライダーが武器となっています。

 三振の63.5%がフォーシームによるもので、19.5%がスライダー、カーブが8.4%となっていますので、フォーシームには自信がある証拠だと思います。メジャーリーグの選手は速いボールには強い選手が多いのですが、それでも彼の投げるボールのうち、17.6%が空振りになるなど平均よりも高い数字で、被打率も.275とまずまずの成績ではないかと思います。

 変化球はブレーキングボールを得意とするようで、スライダーに関してはスイングされても30.6%が空振りになり、被打率も.235。そしてカーブはスイングの31.6%が空振りとなり、被打率は.188と低くなっています。そのため変化球では、この2つの球種が有効なボール、決め球と考えて良さそうです。

 その一方でチェンジアップとシンカーは被打率が高く3割3分から3割6分を打たれている事からも分かるように、あまり良いボールとは言えません。彼を2014年に韓国で見た時に気付いた投球フォームの変化は、韓国に移籍後はアメリカの時よりもインステップが小さくなり、より上から投げ下ろすフォームに変化していて、それがうまくフィットしているように見受けられました。当然ながら196センチの長身からこれだけ投げ下ろされると、角度がつきますので、打者には捉えにくくなりそうです。

 皆さんご承知の通り、ソフトバンクはメジャー帰りの松坂投手が入団しました。2年連続日本一へ先発投手の補強を万全に行ったソフトバンク、今年も日本一の最有力候補になるのではないでしょうか。

著者PROFILE
1950年代生まれ。現役を引退後、MLBスカウトに転身。全米だけではなく日本球界にも太いパイプを築き、スカウティング活動に余念がない。
現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウトによる連載コラム。スカウトならでは視点で日米の選手をジャッジするほかMLBについても語る。

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