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メジャー選手とマイナー選手との待遇の違いは?

 

球場間の移動もメジャーとマイナーでは格差が大きい(Getty Images)



日本よりも豪華なメジャーリーガーの移動と遠征先での待遇


 今回はメジャーリーガー(マイナー選手も含む)の移動方法や、遠征先のホテル、食事についてお伝えしたいと思います。

 日本のプロ野球では、一般客と一緒に新幹線、飛行機移動をすると聞きました。現役のメジャーリーガーが聞いたらとても驚く話だと思います。なぜなら、メジャーリーグでは、ほとんどが飛行機移動です。しかもチャーター機という、チームが飛行機を貸し切っての移動になります。

 簡単に説明をしますと、試合後に球場までセキュリティーのスタッフが来て、バスに乗り込む前にセキュリティーチェックが行われます(一般的に空港でいうチェックインと言った感じでしょうか。その作業をバスに乗り込む前に行います)。

 そして、空港に向かうバスは、選手とスタッフで分かれて乗り込みます。(自然とラテン系の選手はラテン系の選手で固まって座ります)このバスは直接飛行機の真横まで行きますので、空港のターミナルを利用する必要がありません(使った事がないと言った方が正しいでしょうか)。

 また渋滞などが予想される時などには、警察がバスを空港まで先導してくれる事もあります。これは経験がありますがとても気持ち良かった事を思い出します。目的地に到着すると、往路同様にバスが飛行機の真横で待っており、滞在先のホテルに向かいます。ホテルでは係員がチームの到着をロビーで待っており、特設テーブルの上に並べられたそれぞれの部屋の鍵をとって、あとは部屋に向かうだけです。

 フロントに電話すれば、ベルボーイが、別に届いたスーツケースを持ってきてくれるという、とても贅沢な移動です。(部屋割りも選手の契約により異なりますので、チームが宿泊するホテルにスイートが無い場合には近くのスイートがあるホテルに選手が移動する事もあるのもメジャーリーグならではでしょう)。宿泊ホテルはメジャーリーグの決まりで、遠征先でのホテルは4つ星か5つ星のみとなり、選手、スタッフは一人部屋でなければならないという決まりがあるようで、そこも流石メジャーといった感じでしょうか。スーツケースも、出発時にホテルのロビーに専用のスタッフがスーツケースを預かり、次にスーツケースを見るのは、到着したホテルの部屋の中ということになります。

 さて、マイナーリーグの移動はどうなのでしょうか? マイナーリーグの一番上のAAAレベルのチームは飛行機での移動ですが、一般機を使わなければならないのでこちらは日本と同じと言えるでしょう。そしてバス移動も8時間〜10時間はざらにあり、また休みがほとんどないスケジュールの中で、時差もあるので本当にマイナー選手は大変です。

ミールマネーとは?


 ミールマネー(遠征先での食費)は、メジャーでは1日100ドル(約1万2千円)支給されますが、マイナーでは3Aでも1Aでも1日25ドル(約2400円)です。さらにメジャーでは請求されない遠征先での必要経費(クラブハウス・デュー)を1日につき14ドル(約1600円)差し引かれます。そのため実際に手にする食費は微々たるものだ。これではクーポン券を使えるハンバーガー屋で腹を膨らませるしかありません。余談ですが、マイナーの選手は安いメキシカンフードとビールを部屋に買い込み食事をするのが定番となっています。(アメリカでは日本のように、遠征先のホテルで試合後に食事が準備されていないので、選手はロッカーのサンドイッチなどを持ち帰り、ホテルの部屋で食べる選手も多いです)。

なぜマイナー選手は必死になるのか?


 日曜日を除けば、ほとんどがナイトゲームなので、試合後にはもう便がありません。その為、選手の移動は翌朝の便に乗って移動しなければなりません。到着した夜には試合が入っているので、飛行機が遅れた場合を想定して、大体その日の朝一番早い飛行機を利用します。

 当然一般機なので、空港には約2時間前に到着していなければなりません。ナイトゲームが終わって、自宅、または遠征先のホテルに戻るのが夜12時前。そして次の日の飛行機のために場所によっては朝五時前に起きなければならない場合もあります。荷物は、野球道具は両チームの係の方々が運んでくれますが、自分のスーツケースは自分で運ばなければなりません。

 その下のレベル、AA以下になると、移動は全てバスになります。移動時間は近いところでも8時間、遠い所では15時間かかるときもあります。夜の試合後に移動し、バスで寝て、次の日の夜には試合をしなければならないという、大変な移動手段です。選手達はバスの席を一席のみしか使えないので、体の大きなアメリカ人、ラテン系の選手達には大変そうです。(バスでの必需品はダウンジャケットになります。これはエアコンの効きがとても強いのでほとんどの選手がバスの中で寒くなるためです)。

 ジャケットにハイソックスを必ずバスに持ってマイナー選手は移動するのです。 宿泊ホテルもマイナーリーグは、チームの方針によって違いますが、ほとんどのチームが二人部屋で、常に誰かと同じ部屋で寝なければならないのです。これも一人一人生活リズムが違うので大変です。この辛さを知っているからこそ、一度マイナーからメジャーに昇格した選手は、二度とマイナーの生活をしたくないと思うので、マイナーに降格しないように一生懸命頑張っているのです。今後はメジャーリーガーのあまり知られていない情報なども定期的にお伝えしていきたいと思っております。

著者PROFILE
1950年代生まれ。現役を引退後、MLBスカウトに転身。全米だけではなく日本球界にも太いパイプを築き、スカウティング活動に余念がない。
現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウトによる連載コラム。スカウトならでは視点で日米の選手をジャッジするほかMLBについても語る。

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