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アストロズは10年振りのポストシーズン進出へ向けた補強に成功

 

打の補強はカルロス・ゴメス。長打と脚力が魅力的な選手(Getty Images)



西地区首位を走るアストロズが本気の補強


 アメリカンリーグ西地区を引っ張る2チーム、ヒューストン・アストロズとロサンゼルス・エンゼルスですが、今回、ヒューストン・アストロズがさらなる補強に成功しました。

 4人のプロスペクトを交換要員としてカルロス・ゴメス外野手とマイク・ファイヤーズ投手をミルウォーキー・ブルワーズから獲得しました。カルロス・ゴメスは一旦、メッツへのトレードが合意したのですが、メディカルチェックの際に臀部の状態にメッツが懸念を示し破談してしまいました。このような破断はメジャーリーグではよくある話です。しかし今回のトレードでは、このメディカルチェックの問題はクリアして正式に合意し、両チームから成立が発表されました。

このトレードで投手陣の厚みが増すことに


投の補強はマイク・ファイヤーズ。前所属のブルワーズでは安定した投球を見せていた(Getty Images)



 ヒューストン・アストロズは両リーグトップの※140本塁打を誇る打線で、チーム総得点※453が両リーグ3位で、1試合平均で※4.44点を叩きだしています。その一方で投手陣はチーム全体で防御率※3.52で両リーグ9位なのですが、先発ローテは※3.92で同12位と弱さがありました。(※上記は7月31日現在の数値)

 そのため先立ってスコット・カズミアーをアスレチックスから獲得したのですが、そこに今回のトレードで獲得をしたマイク・ファイヤーズを加わることになりました。マイク・ファイヤーズの今季の成績は低迷するブルワーズの中にあって、118.0回を投げて防御率3.89/5勝9敗/奪三振121/WHIP1.36と安定した投球を見せています。

 エースのダラス・カイケル(防御率2.32/12勝5敗/WHIP0.99)、スコット・カズミアー(防御率2.22/6勝5敗/WHIP1.05)の2人を軸に、ルーキーのランス・マカラーズ(防御率2.48/5勝3敗/WHIP1.11)、コリン・マクヒュー(防御率4.43/12勝5敗/WHIP1.32)、スコット・フェルドマン(防御率4.54/4勝5敗/WHIP1.34)という布陣にマイク・ファイヤーズを加える事ができますので、投手陣の層が厚くなりました。

 そしてマイク・ファイヤーズは奪三振率(9イニングあたりの奪三振数)も9.23と高くリリーフの経験もある投手のため、ブルペンでの貢献も期待できる補強となっています。当初、興味を示していたコール・ハメルズやデビッド・プライスほどのサプライズではないものの、カズミアーとファイヤーズの加入で、シーズン終盤まで戦える先発ローテーション、ブルペンの補強が出来たのではないでしょうか。

 アストロズの外野陣はセンターとライトを守るジョージ・スプリンガー(率.264/本13/点29/OPS.822)が故障者リスト入りしていて、復帰は8月中旬ごろになるのではないかと言われております。現状では外野の両翼をコルビー・ラスマス(率.236/本13/点36/OPS.764)、プレストン・タッカー(率.260/本10/点28/OPS.792)を守り、センターをジェイク・マリスニック(率.238/本5/点21/OPS.649)をカバーしています。

 そこに2013年には打率.284/本塁打24/打点73/出塁率.338/長打率.506/OPS.843に40盗塁、2014年にも打率.284/本塁打23/打点73/出塁率.356/長打率.477/OPS.833で34盗塁という成績で、2年連続でオールスターに出場したカルロス・ゴメスが加わることになります。

 今季は故障により74試合の出場にとどまりますが、打率.262/本塁打8/打点43/出塁率.328/長打率.423/OPS.751と、アストロズの外野手の平均値である打率.226・OPS.654を上回る数字を残していますので、攻撃面でのプラスになることは間違いないのではないでしょうか。

 このように攻走守でのアップグレードが期待できる上に、29歳の今季の年俸が800万ドル、30歳となる来季の年俸が900万ドルとリーズナブルな契約で2016年までアストロズがコントロールできることも魅力なのではないでしょうか。

10年振りのプレーオフ進出へ


 アストロズはこのトレードでMLB全体でも39位にランクされていたチーム内のNo.2プロスペクトのブレット・フィリップス(OF)、MLBで87位、チーム内でNo.7のドミンゴ・サンタナ(OF)、No.14のジョッシュ・ハダー(P)、No.21のエイドリアン・ハウザーの4人をブルワーズに放出してしまいましたが、カズミアー、ゴメス、ファイヤーズらの獲得に際して、アレックス・ブレグマン(SS)、マーク・アッペル(SP)といったトッププロスペクトに手を付けることなく成立させている事は評価できるのではないでしょうか。

 カルロス・ゴメスは2016年までマイク・ファイヤーズは2019年までチームがコントロールできる選手を獲得した事により、アストロズGMジェフ・ルノーは良い仕事をしたのではないでしょうか。果たして10年振りのプレーオフ進出は出来るのか注目したいです。

著者PROFILE
1950年代生まれ。現役を引退後、MLBスカウトに転身。全米だけではなく日本球界にも太いパイプを築き、スカウティング活動に余念がない。
現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウト「メジャーリーグレポート」

現役MLBスカウトによる連載コラム。スカウトならでは視点で日米の選手をジャッジするほかMLBについても語る。

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