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記録の手帳 / 千葉功

2015年に初勝利を挙げた男たち

 

新人ながら9勝を挙げた巨人高木勇人や8勝した日本ハム有原航平はさぞかし自信をつけたことだろう。その一方で、15年にやっと待望のプロ入り初勝利を挙げた投手も少なくない。中日若松駿太もそのひとりだ。12年秋のドラフトで中日から7位に指名されて入団したが、14年までの2年間は泣かず飛ばずで一軍では7試合に登板して0勝1敗。それが15年6月に初勝利を挙げるや一気に自信をつけて10勝し、16年の契約更改は5倍以上の大幅アップを獲得した。

発掘してくれたスカウトに捧げたウイニングボール


3年目でブレークした中日の若松駿太。竜の次代を担う存在としてチームの期待も大きい



 1年目の若松駿太はウエスタン・リーグで20試合に登板して3勝2敗がすべて。2年目は一軍で7試合に登板して防御率4.96で0勝1敗。しかし、3年目の15年は5月末までに3試合に投げて0勝0敗ながら防御率は2.35だ。

 5月27日のソフトバンク戦に2回一死から救援すると6回まで4イニングに被安打1で無失点。7回に2点を失ったが、秋には日本一になるチームを相手に5回2/3で被安打3で7奪三振で2失点は大きな自信を得たはずである。

 6日後の6月2日の西武戦に若松は先発してきた。6回表まで被安打3も6四死球とランナーを許したが得点は許さない。中日は6回裏に1点を取ってくれたので、若松は3年目の初勝利を挙げた。



「粘って投げることができた。本当にうれしいですし、最高です」と語っていた若松は記念のウイニングボールを福岡の祐誠高時代に自分を発掘してくれたが、前年2月に亡くなった中日の渡辺麿史スカウトの霊前に捧げた。

 若松はこの1勝で自信をつけた。7月2勝、8月には2日の巨人戦でプロ入り初の完封勝利を挙げてから4連勝、9月も2勝で9勝3敗となった。10月2日の広島戦に10勝目をかけて登板して2失点で完投したが、援護射撃が1点とあって敗戦投手。中日の残り試合は1だが、この最後の10月7日の広島戦で0対0の7回裏から若松が登板した。8回表に若松はタイムリーの右前打でプロ入り初の打点をマークし、中日は3対0で勝ち若松は堂々の10勝目を挙げた。

 来年の契約更改にあたって、中日は今年の年俸550万円の若松に対し3600万円(金額は推定)を提示。楽天が10年の契約更改で、年俸440万円の福盛和男に5000万円と10倍以上もアップさせたことがある。前年は米球界に在籍していたが、復帰初年度に7勝11セーブと好成績を挙げたのを評価したためだ。

 オリックスが94年暮れの契約更改で、首位打者になったイチローに800万円から900%アップの8000万円を提示したのが、過去の大幅アップの代表的な例である。今度の中日の若松に対する555%増も代表的なアップ例となった。

長き苦労の時を経て花開いた才能


 若松は3年目の初勝利だが、今年10年目で初勝利を挙げたのは西武の田中靖洋である・・・

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